Infoseek 楽天

ノマドの窓~渡る世間はネタばかり~ 「孤独のグルメ」の如く〝学生食堂のススメ〟学生気分に戻るというより進むための活力補給、ひとりで行ってこそ至福

zakzak by夕刊フジ 2024年7月10日 11時0分

ティファニーで朝食を楽しむのもいいが、大学の学生食堂で昼食を満喫するというのもなかなか素敵な過ごし方だと思う。値段が安いという理由だけではなく、しばし学生気分に戻れるのが一番の値打ちだ。「いい大人が今さらそんな時代に戻ってどうする」というご意見もあるだろう。僕の場合は〝戻る〟というより〝進むための活力補給〟という感じである。

幸い、僕が住む都内のマンション近くに高千穂大学があり、図書館も食堂も〝一般人利用可〟なので、図書館は仕事場として、食堂は台所として頻繁に利用している。日替り定食が2種類と日替り丼があり、カレー類・麺類も常時ある。大きな窓から緑あふれる景色を眺めながらの食事は実に気分が良いものだ。

もちろん、レギュラー仕事や打ち合せ、観劇などのためにどこかに出かけるときには、一番便利の良い場所に大学があれば当たり前のように利用する。

たとえば、2週に一度、午後に港区の赤羽橋近くのスタジオに通っているが、その前に立ち寄って昼食を楽しむのが慶應義塾大学の三田キャンパスだ。

全体にオールドスタイルの学内に踏み込むと、せわしない世間からしばし逃避できるような気分になる。飲食関連の場所は、生協食堂やカフェテリアがあるが、特に「山食(やましょく)」と呼ばれる創業1937年の食堂がいい。

メニューは何ということもない定食類やカレーライスだが、歴史が染み付いた空気感が心地良いのだ。

早稲田方面に用事がある時は、早稲田大学のキャンパスにおジャマして、生協グランド坂食堂か大隈ガーデンハウスかをその時の気分で決める。しかし最近行ったら、資源なんたらなのか、おかずが紙皿(箱)で提供されたのにはがっかり、閉口してしまった。それはないでしょう…。

そして、打ち合せの数が最も多い渋谷エリア(特に宮益坂方面)なら青山学院大学だ。学生さんたちに混じって堂々と正門を通り過ぎると、食堂はすぐそこだ。大学の食堂は多くの場合、大きなキャンパスのどこにあるのか探し回ることが多いが青学は違う。正門から1分かからない。通称「チカナナ」と呼ばれる古参の7号館食堂と、カフェテリア感のある通称「イチナナ」17号館食堂があって、どちらも常ににぎわっていて、こちらまで気が若くなるし、おいしさも増す気がする。

最後に、僕の学食の楽しみの大事な条件は〝孤独のグルメ〟に通じるロンリースピリットだ。ひとりで行ってこその至福である。 (火曜日掲載)

■東野ひろあき(ひがしの・ひろあき) 1959年大阪生まれ、東京在住。テレビ・ラジオの企画・構成(山寺宏一&野沢雅子のFM大阪「ニュー・ノーマル・ライフ」など)、舞台脚本(「12人のおかしな大阪人」など)や演出(松平健とコロッケ「エンタメ魂」など)、ライブ企画&プロデュース(キムラ緑子と大谷亮介の「ドリー&タニーライブ」など)、コメディ研究(著書『モンティ・パイソン関西風味』など)、他幅広く活動。猫とボブ・ディランをこよなく愛するノマド。

キャンパスを眺めて孤独ランチを堪能。㊦は慶應義塾大学の「山食」

この記事の関連ニュース