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トップ直撃 ポート・春日博文社長 人と企業をつなぐ港に 大学在学時に起業 サイバーエージェント・藤田晋社長が経営のロールモデル

zakzak by夕刊フジ 2024年10月8日 15時30分

人手不足や、エネルギー需給の問題が取りざたされるなか、企業とユーザーをつなぐ「成果報酬型」のマッチングサービスを主軸に社会課題の解決に挑むのがポートだ。春日博文社長(36)は大学在学中からビジネスに取り組み、SNS時代を先読みして創業した。これまで培ったノウハウを生かし、多方面への事業拡大を視野に入れている。

――「キャリアパーク!」や「みん就」「就活会議」など、新卒支援サービスが就活生に支持されています。

「『キャリアパーク!』は就活本の情報を無料で届けるサービスの第1弾で、『みん就』や『就活会議』もユーザー同士で情報をシェアするものを作りました。就職や結婚など意思決定が難しいマーケットは情報の非対称性が強く、透明性を担保することが重要です。コンテンツによって非対称性を埋めるという取り組みです」

――企業と就活生のマッチングサービスは成約後に報酬が発生する「成果報酬型」の事業です

「企業は求人サイト広告には掛け捨てのリスクがありますが、『決まったらお金ください』という方式にすれば利用するハードルが低くなります。最終的な成果までコミットするため収益性も高まると考えます」

――電力・ガス会社とのマッチングサービスなどエネルギー事業にも参入しました

「従来は成約時の一括報酬でしたが、成約時にお金をもらわず、ユーザーの使用料金の割合に応じて事業者からマージンを受け取る形に変えてきています。事業者の成果に入り込むので、よりよいマッチングが考えられます」

――ビジネスを始めたきっかけは

「できることを探していた大学1年時に、4年生で起業している人に出会いました。学生でビジネスという選択肢があることすら知らなかった。ビジネスコンテストを運営するNPO法人に参加したんです」

――大学3~4年に個人事業主になります

「コンテストの協賛金集めをしましたが、出場したり観覧したりする学生が800人もいたので、ビジネス志向のある学生と出会える機会を売りに人事向けに営業していました。イベント後も『いい人いたら紹介してよ』と言われ、採用イベントを開催しました。当時、大学サークルは学生向けに告知する手段がなく『2ちゃんねる』や『ミクシィ』の掲示板に書き込むという時代だったので、サークル向けのチェーンメールを作りました。当時、イベントとメルマガの報酬が年間3000万~4000万円にもなりました」

――起業の決断は

「大学を卒業する2カ月前です。大学4年の春から半年、50人程度の会社でインターンとして働いていましたが、役割分担やオフィスなどの規模に圧倒され、2~3人の会社のほうがいいと思いました。当時まだ少なかったベンチャーキャピタルに入ろうとレジュメを送ると、面談時に『起業した方がいい』と背中を押してもらいました」

――起業内容は

「2011年の1~2月はツイッターやフェイスブックが日本に続々上陸してきたころで、一気に変わるはずだという確信があったんですよね。人材や就職にSNSを掛け合わせる余地があると思いました」

――18年には東証マザーズ(現グロース)などに上場しました

「経営は黒字で投資の必要はないと思っていたのですが、あるベンチャーキャピタルに『大きくなるためには投資が必要』と教えてもらいました。コンサルティングから、メディアというプロダクト(製品)に転換し赤字になりましたが、許容できたのが良かったですね」

――「社会的負債を、次世代の可能性に。」をパーパス(目標)掲げています

「社会が問題として捉えている事象をビジネスで解決できると、社会的価値も貢献度も高くなると思います。政治はルールやテーマを作りますが、変えるのは民間企業だと思っています。今後は医療や金融分野にも興味を持っています」

【家族】妻と3歳、4歳の子供と暮らす。土日はできる限り、子供たちに「新しい体験」をさせることを意識しているという。「外国人の先生との英会話や、ダンスなどの習い事に行かせています。遊びも毎週違うところに行くようにしています」

【熱中していること】本業以外でも、自閉症アーティストの支援や金沢市のプロ卓球チームの経営支援など、社会課題の解決に関連する業務やサポートをしている。

「ビジネスにはなりませんが、社会貢献だと考えています。長期的な目線でやらなくてはいけないことはたくさんあると思います。地方創生で、スポーツは雇用の次に大事だと思っています」

【メディア】テレ東Bizや、日経、産経、毎日、読売、朝日の各紙など多くの媒体を活用している。「1個のコンテンツで人は変わります。月3000円の課金を諦め、記事を読めずに人生のアクションが変わるとしたらもったいない」

【読み返す一冊】サイバーエージェントの藤田晋社長の著書『渋谷ではたらく社長の告白』(幻冬舎)。起業後の成功体験について、経営のロールモデルとした。

「参考にしている経営者はいろいろいますが、この本は起業の最初から大きくなるところまで、目指すべきストーリーそのものです」

【お酒の飲み方】さまざまな種類を飲むが、強いていえば焼酎のソーダ割が好きだという。「毎日飲みます。社員か取引先以外と飲みにいくことはないですね」

【健康法】卓球やジム通い、水泳など。「卓球は中学時代、水泳は小学時代にやっていました」

【座右の銘】«一意結実»。自身の造語だ。

「一つの目的に対して〝一球入魂〟で頑張ると結果が出ます。逆説的にいえば、時間をかけないと結果が出ない。ビジネス一択で勝負しているつもりなので、とにかくここに時間を使うという意識でやっています。自分の生き方自体がそこにあると思うんですよね」

【この仕事に就いていなかったら】「父親が教職員で、自分も大学時代に教職免許を取る授業を受けていたこともあり、教員になる可能性があったと思います」

【会社メモ】学生・社会人向けに就活、転職などの情報提供や企業とのマッチングを行う「キャリアパーク!」のほか、就活生の口コミサイト「みん就」「就活会議」など人材紹介、採用支援サービスを主軸に展開する。電力・ガス事業者とユーザーとのマッチングサイト「エネチョイス」などエネルギー領域にも裾野を広げる。本社・東京。2011年創業、18年に東証マザーズ(現グロース)市場、福証Q―Boardに上場。24年3月期の連結売上高166億円、当期純利益15億円。連結従業員数650人(24年6月末現在)。

■春日博文(かすが・ひろふみ) 1988年2月生まれ、36歳。埼玉県出身。学習院大学経済学部在学中からビジネスを手がけ、個人事業主として新卒採用支援、プロモーション支援を開始する。大学を卒業した2011年にソーシャルリクルーティング(現ポート)を創業した。

ペン/海野慎介

カメラ/岩崎叶汰

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