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八幡和郎 民主主義の危機・国家指導者 立憲・野田佳彦新代表は「保守政治家」なのか かつて皇位継承問題で安倍氏と対立 忘恩で人情に欠ける〝KY〟とも

zakzak by夕刊フジ 2024年9月25日 6時30分

立憲民主党代表選で23日、野田佳彦元首相が新代表に選出された。自民党総裁選(27日投開票)でも、高市早苗経済安保相に勝機が見えてきた。2人の共通点は、松下政経塾出身である。

私はかつて、『松下政経塾が日本をダメにした』(幻冬舎)を書いた。野田、高市両氏はたたき上げの苦労人である。ともに愛国者で、野田氏は自衛隊員の子息であり、国防意識も高いと思いたい。

ただ、野田氏は首相時代、稚拙な外交対応で、韓国や中国と〝無意味な紛争〟を引き起こした。私は国益を大きく損ねたと思う。

野田氏は2011年12月、京都市の京都迎賓館で、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領と首脳会談を行った。李氏から慰安婦問題での譲歩を懇願されたが、無意味な激論となった。これが、翌年8月、李氏の島根県・竹島への強行上陸を招いたとされる。

さらに、野田氏は12年9月9日、ロシア極東ウラジオストクでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)会場内で、中国の胡錦濤国家主席と約15分間、立ち話をした。日本政府は翌々日(11日)、沖縄県・尖閣諸島の国有化を発表し、中国の大規模な「反日」運動を招いた。

野田氏率いる民主党は12年12月の衆院選で下野し、第2次安倍晋三政権がスタートした。安倍氏は22年7月、参院選の街頭演説中に凶弾に倒れた。野田氏が同年10月、国会で行った追悼演説は人情味があった。

だが、生前の安倍氏が、皇位継承問題の解決に立ちふさがる存在として、最も腹を立てていたのは野田氏である。

「安定的な皇位継承策を検討していた政府有識者会議」(座長・清家篤元慶応義塾長)は、悠仁さまの継承を大前提としつつ、①女性皇族が結婚後も皇族の身分を本人のみ保持する②旧宮家の男系男子が養子として皇族に復帰する―との報告書を岸田文雄首相に提出した。

この2案をもとに与野党協議が始まっているが、野田氏らは女性皇族の配偶者や子供にも皇族の身分を付与せよとか、旧宮家だけが皇族になれるのは憲法14条(法の下の平等)に違反するとの指摘がある―などと主張している(詳細は、新著『系図でたどる日本の皇族』TJMOOKで解説)。

自民党総裁選の有力候補のうち、石破茂元幹事長や小泉進次郎元環境相も、悠仁さまの継承は当然で男系が望ましいと言っているが、野田氏がごねたときに、安倍氏の置き土産といえる養子案を貫き通せるか不安がある。

余談だが、野田氏が1987年に千葉県議に初当選したとき、松下政権塾の後輩である高市氏は千葉に数カ月住み込んで応援した。野田氏はその後、高市氏の奈良の選挙区に対立候補の応援に入った。永田町では、忘恩で人情に欠けるとあきれられた。

今年夏の東京都知事選でも、野田氏は東京・銀座で、共産党の志位和夫前委員長と並んで応援をした。野田氏を「野党ではましな保守政治家」などと間違えるべきではない。私には、無神経な「KY」に見える。

■八幡和郎(やわた・かずお) 1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。作家、評論家として新聞やテレビで活躍。国士舘大学大学院客員教授。著書・共著・監修に『安倍さんはなぜリベラルに憎まれたのか―地球儀を俯瞰した世界最高の政治家』(ワニブックス)、『日本の政治「解体新書」世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書439)、『民族と国家の5000年史』(扶桑社)、『系図でたどる日本の皇族』(宝島社)など多数。

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