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ニュースの核心 トランプ氏、きょう銃撃後初演説 大統領復活ならアジアに重点シフト、日本に「憲法改正」迫るか 鍵握る〝強硬派〟バンス氏

zakzak by夕刊フジ 2024年7月19日 11時34分

ドナルド・トランプ前米大統領は18日(日本時間19日)、ウィスコンシン州ミルウォーキーでの共和党全国大会で、11月の大統領選に向けた党候補の指名受諾演説に臨む。暗殺未遂事件後の行動で、トランプ氏は「強い指導者像」を示し、ホワイトハウスに凱旋(がいせん)する可能性が高まっている。副大統領候補のJ・D・バンス上院議員は前日、「トランプ氏こそが大統領だ」「勝利するために結束する」と演説した。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、トランプ氏の復活が「ウクライナ戦争」や「台湾有事」に大きな影響を与えるだけでなく、同盟国・日本も「防衛力強化」「憲法改正」の決断を迫られる可能性を指摘した。

世界を震撼(しんかん)させた暗殺未遂事件を経て、トランプ氏が11月の米大統領選で勝利する可能性が高まってきた。米国の「ウクライナ支援」、さらに「台湾有事」への対応はどうなるのか。

私は副大統領候補に指名された「バンス氏が鍵を握る」とみる。ウクライナ支援は凍結され、代わりに中国に対する抑止政策は飛躍的に強化されるだろう。

トランプ氏は、かねてウクライナ支援に消極的だった。日本では、ほとんど報じられていないが、6月27日(同28日)に開かれたジョー・バイデン大統領とのテレビ討論会で、トランプ氏は「ウクライナは戦争に勝っていない」と断言した。

4月7日付の米紙ワシントン・ポストは、関係者の話をもとに「ウクライナは占領されたクリミア半島と東部ドンバス地方の奪回をあきらめて、停戦すべきだ」というトランプ氏の戦争終結プランを報じている。

トランプ氏は「私なら24時間以内に戦争を終わらせる」と公言していたが、この案が背景にあったのだ。

トランプ氏と気脈を通じているハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相は、欧州連合(EU)の議長国に就任した直後、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、中国の習近平総書記(国家主席)と立て続けに会談した。オルバン氏も一貫して停戦を唱えている。

興味深いのは、その後だ。

オルバン氏は7月11日、トランプ氏を米南部フロリダ州の別荘に訪ねて、会談した。Xに「私たちは平和を作り出す方法を話し合った。今日の良いニュース。彼はそれを解決する!」とポストした。オルバン氏は「トランプ大統領復活」に先立って、早くも停戦の露払いに動いている。

バンス氏も一貫してウクライナ支援に反対してきた。6月13日付の米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューでは、こう語っていた。

《ウクライナの反転攻勢は破局に終わる、と思っていた。「いい国」と「悪い国」に分ける道徳主義に動機づけられ、戦略的思考が十分でなかったからだ。ロシアは十分に準備していた。米軍指導者と非公開の場で話せば、すぐ分かるが、彼らは「ウクライナが戦略的に打開できる」などとは思っていない》

《ウクライナは戦闘を凍結すべきだ。そして、国の独立と中立性を保証する。長期的には米国が安全を保証する。この3つは達成可能だ》

中国を「最大の脅威」と断言

バンス氏は中国については、副大統領候補指名受諾後の7月15日、米FOXテレビでこう語った。

《中国はわが国にとって最大の脅威だ。だが、われわれは完全に目をそらされている》

つまり、「ウクライナに膨大な支援をしているから、台湾支援が不十分になっている」というのだ。バイデン政権の対中認識は「米国の競争相手」「差し迫った挑戦」だ。それを「最大の脅威」と断言したところに、バンス氏の面目躍如たる感がある。

そんなバンス氏が副大統領に就任すれば、日本にも重大な影響がある。ニューヨーク・タイムズのインタビューでは、こう語っていた。

《米国は1980年代と90年代のおかげで、いまでも軍事的超大国だ。だが、中国にはわれわれよりも強力な産業がある。20年以内に、もっと強力な軍事大国になるだろう》

《今後20年から30年は重要な競争相手がいる東アジアにわれわれが集中できるように、同盟国にはもっと努力してもらわなければならない》

同盟国とは、日本、韓国、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドだ。ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)に任せて、米国は東アジアに集中していく。日本は一層の防衛力強化と、その先には憲法改正も迫られるのではないか。

そうだとすれば、私はおおいに「歓迎すべき展開」だと思っている。

■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

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