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トップ直撃 サザエ食品・戸島陽平社長 あんこの多彩な楽しみ方〝提あん〟「スイーツというより調味料」 小豆は栄養価高い「スーパーフード」

zakzak by夕刊フジ 2024年12月24日 11時0分

「あんこで物語を創る」を社是に掲げ、「十勝あんこのサザエ」「京都祇園あのん」などのブランドを展開するのが兵庫県西宮市に本社を置くサザエ食品だ。創業から半世紀あまり、北海道・十勝産のあんこを使った伝統の味を守る一方、チーズやバターなどと組み合わせた革新にも力を入れている。戸島陽平社長(39)は、あんこの原料となる小豆(あずき)は「スーパーフード」だといい、その力を生かした商品も展開している。

――どのような事業が柱となっていますか

「売り上げの約半分は『十勝あんこのサザエ』ブランドの和菓子です。おはぎや大福、だんごのような生菓子から、たい焼きや大判焼きなどを展開しています。そして新しく立ち上げた『京都祇園あのん』ブランドが25%ぐらいまで成長しています。あとはスーパーさんなどへの商品の卸をしています」

――十勝産のあんこを使っているそうですね

「圧倒的に品質が良いので、変わらず使っています。あんこの原料である小豆は5月ごろに種をつけて、10月から11月にかけて収穫を始めます。昼の暖かさと夜の冷えという寒暖差が非常に大事で、それによって小豆のつやや粒の大きさが左右されます。その点が十勝は非常に恵まれているんです。小豆は連作ができないため、広大な土地が必要という理由もありますね」

あんこは「関東」と「関西」で作り分け

――あんこの味は変化していますか

「同じ味を守っていくことが大前提ですが、小豆の品質は毎年違うんですね。ですから、今年の小豆はこうしよう、とレシピを固める作業を毎年やっていますね。あんこは関東用と関西用を作り分けています。簡単にいうと東京のあんこは塩分が多く、関西のあんこは塩がちょっと薄いという特徴があります」

――「京都祇園あのん」というブランド名の由来は

「かなの五十音の最初が『あ』で最後が『ん』で、真ん中の25文字目が『の』なんです。五十音を通じて言葉がつながるように、あんこを通して人と人とつないでいきたいというコンセプトです」

――和洋折衷など斬新な商品を展開しています

「看板商品はあんことマスカルポーネチーズを最中(もなか)で挟む『あんぽーね』です。元々サザエ食品の店舗で、温かいぜんざいにエスプレッソをかける『コーヒーぜんざい』が売れていました。『あのん』のブランドで何を作ろうか考えていたときに、たまたま入った喫茶店で、ティラミスとコーヒーのセットを頼んだときに思いつきました。あんこを使うぜんざいとコーヒーは合う、マスカルポーネチーズを使っているティラミスとコーヒーも合うとなると、あんことマスカルポーネチーズも相性がいいのでは試したところ、すごくおいしかったんです。これを挟む最中には『滋賀羽二重糯(しがはぶたえもち)』というもち米を使い、サクサクして香ばしい食感を出しています」

――そうなると「あんぽーね」とコーヒーも合うということですね

「当然合いますね。ほかにもシャンパンや白ワインなどにはよく合います」

――「Red Diamond(レッドダイヤモンド)」というあんこの販売も手掛けています

「小豆を特殊な炊き方をすることで、食物繊維が通常のあんこの約2倍、焼き芋の約3倍となります。『腸活スイーツ』という切り口で展開しています。そのまま食べていただいてもいいですし、あんトーストや、コーヒーや牛乳、豆乳で割るなどして楽しんでいただいていますね」

――通常のあんことの作り方の違いは

「小豆は栄養価の高いスーパーフードなんですが、あんこを作るときに出る煮汁を捨てる際に栄養分も失われるんですね。元の小豆の栄養分を100とすると、粒あんで30、こしあんにすると15くらいになってしまいます。煮汁を捨てずに炊き上げる技術を実現して、小豆の栄養分をそのまま閉じ込めています」

――「あんこで物語を創る」が社是です

「あんこはスイーツというより調味料といえるぐらい、いろんな楽しみ方ができる商品です。人それぞれの楽しみ方を提案していきたいですね」

●ドラム演奏「会社経営にも通じる」●

【のれん分け】ユニークな社名の会社は、元々は北海道発祥だ。

「私の祖母の妹が北海道で創業して、のれん分けする形で15年後に関西で立ち上がったのがわれわれの会社です」

【バンド】幼稚園から高校まで福岡で過ごした。「高校時代はバンドを組んでドラムをやっていました。高校の部活の先輩にはKANさんやスピッツの草野マサムネさんがいます」という。

ドラムを担当したきっかけは「じゃんけんで負けたこと」だというが、現在の会社経営に通じるところもあるという。「ドラムは後ろからメンバーを見て、どうやったらテンションが上がるかを意識します。私は目立つのがあまり好きじゃないので、ちょっと下がって皆さんのいいところを伸ばして悪い部分を補うタイプですね。バンド時代の経験が経営者の基礎にもなっていると思います」

【理系】大学は「一番苦手なものを勉強しようと思って理系に進みました」という。

卒業後、IT系の経営コンサルタント会社に入社した。「物流会社のシステムやコンビニのチケットを出力する端末、タクシー会社の配車アプリなどを手掛けました。自分が一番苦手なものがITと経営だったので、両方を勉強する狙いでした。成功が見えている道に進んでもあまり面白みがないので、険しい道に行きたがりますね」

【社長】2014年に社長に就任した。

「最初に取り組んだのは、店舗の売り上げ報告やリポートをシステム化することでした。それまでは毎日店長が手書きでファクスで送り、本社で入力していました。私が自分でシステムを作り、全店でiPad(アイパッド)で売り上げを入力し、翌朝には自動でリポートが出るようにしたことで経営判断の速度やデータの精度が上がりました」

●動画チェックが商品開発のヒント●

【動画】毎日午前0時から3時ごろまで、テレビのドラマやバラエティー番組、配信やユーチューブなどの動画を見る時間に充てている。

「はやっているものをすべてインプットしようと思っています。このアニメで使われているこういう言葉が今の人たちに〝刺さる〟んだろうなとか、商品開発や経営のヒントになることもあります。(中国の春秋戦国時代を舞台にした)『キングダム』の発想で、できた部署もあります」

【健康法】自社のあんこ「レッドダイヤモンド」を使った腸活。

【座右の銘】《できるできないではなく、やるかやらないか》

「コンサル勤務時代にチームリーダーが教えてくれた言葉です。やるという意志を持つことが成長につながるということで、いまも大事にしています」

【会社メモ】あんこを使用した菓子の開発、製造、販売や店舗運営、卸売などを手掛ける。「十勝あんこのサザエ」は国内30店、海外1店、「京都祇園あのん」は10店を展開する。本社・兵庫県西宮市。1973年創業。グループ従業員数約800人。

■戸島陽平(としま・ようへい) 1985年1月生まれ、39歳。兵庫県出身。大阪大学基礎工学部卒業後の2008年、フューチャーアーキテクト入社。12年サザエ食品に入社し、14年に代表取締役社長に就任する。

(ペン・中田達也/カメラ・松井英幸)

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