2024年も残りわずか。昭和100年となる25年(令和7年)へのカウントダウンが進んでいる。
プロレスも時の流れに沿って変化してきた。まだまだ敗戦ショックが残っていた1950年代半ばからの力道山・日本プロレス時代には日本人選手が外国人選手を倒すことで、プロレス人気は大いに盛り上がった。日本人vs外国人の図式だった。
70年代の馬場・全日本プロレスは「外国人天国」と言われていた。プロレス大国アメリカから強豪レスラーをほぼ独占して招へいしていた馬場・全日本で人気、実力ともに日本人選手をしのぐ外国人選手が暴れまわっていた。馬場・全日本に対抗するため、猪木・新日本プロレスは日本人対決に走る。猪木vsストロング小林らの名勝負が誕生し、馬場・猪木のBI時代は選手の引き抜きを始め興行戦争も激化。全日本と新日本のしのぎ合いにファンは熱くなっていた。
続く鶴龍長天時代、初代タイガーマスク、UWF系、闘魂三銃士・四天王時代、独自路線の大仁田厚などプロレス界も多様性の時代を迎えている。かつては100人にも満たなかったレスラー名鑑は今では1000人を超えている。名乗れば「団体」となり、プロレスだけで生計を立てている者は、ほんの一握りだが、プロレスラーを名乗り認知されている選手は年々、増えている。
娯楽は多種多様化。プロといえば野球、大相撲だったが、Jリーグ(サッカー)、Bリーグ(バスケット)、リーグワン(ラグビー)、Tリーグ(卓球)…アマチュアだった種目がプロ化され人気を集めている。力道山、馬場、猪木と昭和の三大偉人も他界。今年は「極悪女王」が大ヒットし、昭和の女子プロレスが再認識された。パワハラ、モラハラ…何でもありの全日本女子プロレスの内実が描かれ、その後もモデルとなったOGたちが赤裸々に告白している。
ファイトスタイルは時代の風を受け変化していくが「プロレス」自体は変わらない。プロレスラーは命がけで闘い、ファンを熱狂させている。ただ茶の間に存在していたプロレスが、今では熱いファンのための限定的なモノになっている。楽しめる趣味はそれこそいくらでもある。プロレスはマニアックなものになってしまうのか。
だがプロレスは面白い。若手とベテラン、エリートとたたき上げ。チャンスをつかんだ者、負け続けてもくじけない者。体の大小に関わらず闘う。
リング上は社会の縮図。自分と重なるレスラーに自分の人生を投影しているファンもいるだろう。老若男女、広く世間の人々に観てほしい。レスラーはファンから、ファンはレスラーから勇気と元気をもらえる「プロレスの力」は不滅。今日も一緒にプロレスを楽しみましょう。 =敬称略
(プロレス解説者・柴田惣一)