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ノマドの窓~渡る世間はネタばかり~ 森高千里〝スッピンな言葉〟の素晴らしさ 多くの人がぶちのめされた、作詞家として綴る自由自在な言葉 問題作の「この街」

zakzak by夕刊フジ 2024年10月9日 6時30分

〝目力(めぢから)〟という言葉がある。「あの人の〝めぢから〟すごいよね」と言ったりするが、僕が未だに忘れられないのは、木村拓哉さんのソレだ。

まだ平均年齢が20歳そこそこだった頃のSMAPの番組の構成をしていたことがあるのだが、楽屋で「おはようございます」とあいさつして、こっちを見るときの〝めぢから〟の圧はすごかった。その後、10年、20年と経ってから、何度か収録スタジオですれ違ったが「ギロリ」という音が聞こえて来る気がするほどの〝めぢから〟は増していた。ご存じの方は「うむ、そうそう」と深く納得していただけると思う。

松村邦洋さんは〝感謝力(ありがたぢから)〟の人だ。親しくさせていただいているが、ことあるごとに「ありがとうございます。感謝しております」という言葉と正直な表情を向けて来るから、好きになり続けてしまう。

そんな言い方で行くと、森高千里さんは〝素力(すぢから)〟の人だと思う。僕が最初に驚いたのは「私がオバさんになっても」の歌詞の中で、自身がオバさんになったとき、あなたはオジさんで、格好のいいことを言っていても「お腹が出てくるのよ」と言い放った。何とストレートな!

ミニスカートで美脚を披露して歌うが、単なるアイドルではなく、いろんな楽器をこなす上に、作詞家として綴るその自由自在な言葉に多くの人がぶちのめされた。

そんな問題作のひとつが「この街」。子供の頃遊んだ街、好きだった彼と別れた街が変わっていくけどやっぱり好きだという内容だが、その理由として「魚も安くて新鮮」と言ってキメる。さ、さ、魚が新鮮て! これぞ〝素力〟だ。

もちろんいろんな曲のそこかしこに、まだまだ素晴らしくスッピンな言葉が散りばめられているのだが、歌詞のことはここで横に置いといて。

森高テイスト満載のトークを聴けるラジオ番組が10月から始まったのでお知らせしておきたい。FM大阪発、毎週日曜朝8時からの30分番組「ララ サンシャイン レディオ」だ。彼女はかなりマニアックな街歩きを楽しみ、ディープなローカルグルメを愛する人で、全国ツアーの合間に食べ歩いた記録満載の『「この街」が大好きよ』(集英社)というフォトエッセイも出しているほど。

そんな「街の話とおいしいトーク」は〝素力〟の人ならではの説得力だ。日曜の朝を、森高のサンシャインボイスでスタートできるのはなかなかに素敵ですよ。ぜひお聴きください。

■東野ひろあき(ひがしの・ひろあき) 1959年大阪生まれ、東京在住。テレビ・ラジオの企画・構成(FM大阪「森高千里ララサンシャインレディオ」)、舞台脚本(「12人のおかしな大阪人」)やコンサート演出(松平健とコロッケ「エンタメ魂」)、ライブ企画・構成(「小室等de音楽祭」)、コメディ研究(著書『モンティ・パイソン関西風味』など)。猫とボブ・ディランをこよなく愛するノマド。

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