2年前の4月に拙コラムで紹介した「空振りをしないルーキー」が才能を開花させて、米大リーグのオールスター戦(16日=日本時間17日、テキサス州アーリントン)に初選出された。
「本当に素晴らしい。けがのことを忘れさせてくれるくらい大きな出来事だよ」と喜んだのはガーディアンズのスティーブン・クワン外野手(26)。ファン投票(フェーズ1)ではア・リーグ3位の172万票あまりを集めた。
「1番・左翼」に定着した今季は開幕から絶好調。過去2シーズンの通算打率・282から一転、5月初旬にハムストリングを痛めて離脱するまで・353をマークして、地区首位と好スタートを切ったチームの原動力になっていた。
5月末に復帰して、今月3日(同4日)に規定打席に到達。翌日のホワイトソックス戦(クリーブランド)では8号ソロを含む今季12度目の3安打で打率をリーグ断トツの・367に上げた。ア・リーグではヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(32)が本塁打と打点で同1位。三冠王を期待されているが、その快挙を阻むほどの存在となっている。
メジャーに初昇格した2年前に話題となったのが、驚異的なコンタクト力だった。初打席から6試合目の第1打席2球目まで計116球に対して40スイングで空振りがゼロ。公式記録会社によれば、2000年以降にデビューした選手では最長だった。
左投げ左打ちのクワンは身長175センチ、体重77キロと小柄で、「リトル・イチロー」「ベイビー・イチロー」と呼ばれることがある。過去2シーズンはゴールドグラブ賞を獲得。「守備の人」のイメージが強かったが、メジャー3年目の今季は「本家」のような広角打法をみせている。すでに自己最多の9本塁打とパンチ力もついてきた。
父親は中国系米国人で、母親が日系二世。昨年開催されたWBCでは侍ジャパン入りを望んでいるという報道もあった。強振する選手が増えた近年の大リーグでは稀有な存在。球宴では、巧みなバットコントロールに注目だ。 (元全米野球記者協会理事)