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トップ直撃 野菜摂取量を見える化、食習慣サポートアプリ「ナトカリプログラム」開発 カゴメ・山口聡社長「野菜先生」で全国講義も

zakzak by夕刊フジ 2024年7月2日 6時30分

カゴメは国内初のトマトジュースを発売して2023年に90周年を迎えた。ここ数年好調が続き、出荷実績は最高だった。今年はさらに野菜飲料「野菜生活100」や、主原材料のにんじんに着目したプロモーションを展開し、「β(ベータ)―カロテン」の価値や、独自の加工技術で、にんじん本来のおいしさを広めている。山口聡社長(63)は「今後とも価値ある商品、サービスをお届けしていきたい」と話す。

好調なトマトジュース、にんじんやブロッコリーにも着目

――「カゴメトマトジュース」が好調です

「2016年に『善玉コレステロールを増やす』(リコピン)と表示した機能性表示食品となり、18年から『高めの血圧を下げる』(GABA)の機能性表示を追加しました。それにより、メインユーザーの40~60代の購入量が一層増え、SNSなどでトマトやリコピン、健康・美容に関する話題が増えて20~30代の購入率が増加したことが好調の要因です。生鮮トマトの価格の高騰が続き、トマトジュースが代替として利用されたことも影響しています」

――20年から「野菜をとろうキャンペーン」を展開しています

「厚生労働省が推奨する1日の野菜摂取目標量は350グラムですが、日本人の平均野菜摂取量は約290グラム。約60グラムの野菜が不足しています。そこで、『野菜をとろう 350グラム』をスローガンとして、他企業・団体や、有識者との恊働によって野菜摂取意欲を高めるさまざまな施策を展開しています」

――具体的には

「一例として、旭化成ホームプロダクツとパナソニックとの協業による、『野菜を賢く冷凍することによるフードロス削減』の取り組みがあります。茎の部分が廃棄されやすいブロッコリーに着目し、ブロッコリーを丸ごと使い切るための保存方法や食べ方について情報発信しています。コツは新鮮なうちにブロッコリーを茎の部分もゆでて、ジップロックなどに入れ冷凍保存することです。3社共同でPOPなどを作成、スーパーの店頭などで紹介し、お客さまからご好評いただいています」

――野菜摂取量を推定する機器「ベジチェック」の普及もキャンペーンの一環です

「ベジチェックは、発光ダイオード(LED)を搭載したセンサーに手のひらを当てて、約30秒で野菜摂取量を推定できます。多くの方が『もう少し野菜をとらなくては』と認識しているのですが、実際にどのぐらい不足しているのかよく分かりません。それを見える化したものです」

――画面に数値が表示されるのですね

「野菜摂取量を120段階(0・1~12・0)で表示しています。一般の方は大体5・0~6・0の間で、当社社員は日々野菜ジュースなどを飲んでいて7・0以上になる人が多いです。野菜摂取量の推定値(グラム)も表示されます。スーパーマーケットの生鮮野菜売り場などに設置していますが、数値のチェックが楽しく、来店の動機になっている方もいるようです。企業や自治体の健康増進支援ツールとして、健康管理や食生活の指導などさまざまな場面で活用いただいています」

――食習慣サポートアプリ「ナトカリプログラム」とは

「高血圧の原因が塩(ナトリウム)の取りすぎということは知られています。食生活での減塩が重要ですが、おいしさが損なわれて難しいのが現状です。そこでナトリウムの排せつを促すカリウムを野菜や果実から積極的に摂取する『ナトカリ』という考え方を普及しています。このたび、そのナトカリのバランスを見える化し、カリウムを意識的に摂取する食習慣をサポートするアプリ『ナトカリプログラム』を開発しました」

――プログラムの特徴は

「食事を記録すると、ナトリウムとカリウムのバランスや推定摂取量がグラフで表示され、カリウムの充足度を知ることができます。またナトカリを継続するために推奨される食生活を『今日のルーティン』として日替わりで表示し、ナトカリに関する日々の生活に役立つヒントやコツをコラムとして紹介します。各企業には、従業員の健康対策や健康軸での顧客サービス強化に活用いただいています。今後も健康的な食生活の普及を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い会社にしていきます」

1899年創業

【会社メモ】創業者の蟹江一太郎が最初のトマトの発芽を見た1899年を創業としている。国内事業では野菜飲料や食品の需要を喚起し、国際事業では業務用事業を強化している。2024年1月、米加工用トマト1次加工会社Ingomarを連結子会社化し、海外成長の加速とカゴメグループ全体の持続的成長を目指す。名古屋市と東京都中央区に本社を置く。23年12月期の連結売上収益2247億円。連結従業員数2921人。

「野菜先生」で全国講義 高校時代はボート部で活躍

【東北大学】浜松市で育ち、高校時代はボート部に所属し青春を謳歌(おうか)した。東北大学に進んだのは、杜の都という風情がある仙台市で大学生活を送りたいと思ったから。「当時、上野―仙台間は特急列車で4時間15分かかりました。東北新幹線開通は大学3年の時でした。懐かしい思い出です」

【食品の機能性の研究】農学部にはさまざまな研究室がある。所属していたのは食品の機能性を研究するチーム。「そばやあさりは血圧を下げる効果がある」などという民間伝承を実証する研究を行っていた。5年ほど前、移転した農学部のキャンパスを訪問する機会があり、教授や在校生に会った。「一生懸命取り組んでいました。研究って良いものですね」

【東京マラソン】カゴメ東京本社ビル横の新大橋通りは東京マラソンのコースとなっている。50歳の時、沿道からランナーを応援し、ランナーの表情を見ているうちに「私も挑戦してみたくなりました」。体力作りのためウオーキングから始めて7年後、57歳で挑戦し完走した。「うれしかったです。やればできることを実感しました」

【ランニング】趣味のひとつ。コロナ禍では平日に会社から帰宅してから、今は土・日曜日に自宅近くの公園を走っている。公園の中のランニングコースは、道幅が広く平坦(へいたん)でノンストップで走ることができる。ホームコースにしているランナーも多く、走る姿を見ていると刺激になる。「月間100キロメートル走るのを目標にしています」

【野菜先生】カゴメは2018年から、子供たちが野菜を好きになり、もっと食べてもらうきっかけを作る食育プログラム「おいしい!野菜チャレンジ」を全国で開催している。「野菜先生」の1人として年に数回、小学生を対象に野菜の魅力やヒミツについて講義。「目を輝かせて私の説明を聞いてくれる子供たちに元気をもらっています」

【さとログ】名前の「聡(さとし)」を用いた「さとログ」という社員向けのブログを発信している。昨年5月にコロナが5類に移行してからは、積極的に工場や研究所・名古屋本社などを訪問。最近は、その時の様子や社員との写真をブログにアップしている。「その時に自分が感じたことをメインに、楽しみながら書いています」

【好きな言葉】«一期一会»。いつも「もう二度と会えないかもしれない」と、誠意を持って接するように心がけている。「これからもその思いを大切にしていきたいと思っています」

(ペン・危機管理、広報コンサルタント山本ヒロ子 カメラ/酒巻俊介 レイアウト/万代佳弘)

■山口聡(やまぐち・さとし) 1960年12月生まれ、63歳、浜松市出身。83年東北大学農学部卒。カゴメ入社。茨城工場、総合研究所、商品企画部などを経て2003年業務用ビジネス・ユニット部長。10年執行役員業務用事業本部長。15年同イノベーション本部長、18年同野菜事業本部長。19年取締役常務執行役員を経て20年、代表取締役社長に就任する。

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