石破茂首相(自民党総裁)が、何と「政権延命」への自信を深めているという。大惨敗した10月の衆院選後も「官邸居座り」を続けるなかで、野党分断を利用して国会運営を乗り切った手応えもあるようだ。臨時国会は24日閉会するが、来年夏の参院選を見据えた言動も目立ってきた。ただ、政敵だった安倍晋三元首相の盟友、ドナルド・トランプ次期米大統領との関係構築や、習近平国家主席率いる共産党独裁の中国との距離感、厳しい展望の国内経済など、不安定要素は山積している。内閣支持率も30%以下の危険水域に近づいてきた。日本は石破政権で大丈夫なのか。
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「国民に、今国会の成果をはじめ、政府与党の取り組みを丁寧に説明したい」
石破首相は23日、自民党役員会でこう語った。臨時国会閉会後の24日夕に行う記者会見で、その成果を説明するという。
国会最終日は、参院本会議で政策活動費の全面禁止などを盛り込んだ「政治改革3法案」が可決する見通しだ。石破首相が〝目玉〟に据える「政治とカネ」の問題では、外国人のパーティー券購入禁止などがクローズアップされる一方、「企業・団体献金の存廃」をめぐって大混乱した。
さらに、国民民主党が「国民の手取りを増やす」として打ち上げた「年収103万円の壁」の引き上げでは、自公与党と国民民主党が「178万円を目指して来年から引き上げる」と合意した。ところが、自公は中間値以下の「123万円」を提示し、結局は〝越年〟する見通しとなった。
野党幹部は「財務省の影響が強い『緊縮派のラスボス』こと宮沢洋一税制調査会長らの抵抗が浮き彫りになったが、最大の問題は、石破政権や自民党内のガバナンス欠如だ。各野党に秋波を送り、都合よく約束を破る姿勢を国民はハッキリと認識した。来年の都議選や参院選で『答え』が出る」と自信をのぞかせる。
自民党ベテラン議員も「石破自民党は、衆院選の大敗から今国会まで、混乱に次ぐ混乱を招いた。反省すれど『成果』を強調できる局面ではない」と厳しく指摘する。
クリスマス寒波並みの逆風だが、石破首相は逆に「続投への自信」を深めているという。
ジャーナリストの歳川隆雄氏は23日発行の夕刊フジの連載「永田町・霞が関インサイド」で、石破首相が補正予算成立、政治改革3法成立などで政権運営に「自信」を抱き始めたと指摘した。早期退陣の予測が一転し、「官邸周辺から聞こえて来るのは、何と通常国会を乗り切り、参院選も自らが先頭に立つとの鼻息荒い話が少なくない」と内情を明かした。
そういえば、今月8日、自民党本部で開かれた全国幹事長会議でも、石破首相は衆院選惨敗について、「すべて総裁たる私に帰せられるべきもの」と陳謝する一方、来夏の参院選について、「そんなに時間があるわけでもない」と述べ、自らが先頭に立って準備を急ぐ意向を示した。
今月12日には、自身の「今年の漢字」について「謙虚」の一字を取り「謙」を選んだ。
ある自民党議員は「石破首相はかつて、政権交代に直結しない選挙の敗北でも、歴代総裁に『政治責任』を要求してきた。自身が先頭に立った10月の衆院選は、与党過半数割れの敗北で大政局を招いている。石破首相の今年の漢字は『謙』ではなく『虚』だろう」と突き放す。
石破政権は外交政策でも難題山積だ。
来月、第2次政権を発足させるトランプ次期大統領には、安倍元首相の妻、昭恵さんのとりなしで就任前に会談できる可能性が出てきたが、当初は早期会談を拒絶されていた。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏答弁しくじりで「石破おろし」も
石破政権の今後をどう見るか。
政治評論家の有馬晴海氏は「政権発足から約2カ月半がたち、石破首相にもやや慣れが出てきたのではないか。衆院選がどん底だったとすると、補正予算を成立させ、野党も協力関係を求めるようになった。来年度予算の成立と引き換えに辞任する『4月政変』の観測も根強いが、国会運営や予算の通し方などが少し見え始めてきたのではないか」と分析する。
内閣支持率が低迷するなか、「石破おろし」の動きはないのか。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「年内は『石破おろし』は出てこないだろう。少数与党の限り、石破首相でなくても何もできない。自民党内にも『今辞めさせてどうする』といった意見はある。世論調査でも『石破氏が辞める必要はない』という声がある。そうした世論があるうちは、党内でのろしを上げても、同調する声は広がらないのではないか。ただ、来年の通常国会で石破首相が答弁をしくじると、取り返しがつかないことにもなり得る。安全保障分野で突然持論を披瀝(ひれき)などして、『政府見解と違う』といった批判を浴びると、政権運営にも響きかねない」と語っている。