「ジャンボ尾崎アカデミー」には、これまで登場した笹生優花、原英莉花、西郷真央の他に、佐久間朱莉(22)、小林夢果(21)といった逸材が育っている。
佐久間は原とほぼ同じ時期(当時中学生)に尾崎に弟子入りした。飛距離不足が課題だったが、尾崎の徹底した筋力強化のトレーニング指導で弱点を克服し、昨年はドライビングディスタンスで14位(平均250ヤード)、トップ10以内が14回。平均ストローク7位(70・3)パーオン率5位(74・0)、賞金ランク7位とオールラウンドプレーヤーに成長している。
また小林は、佐久間と同様、中学卒業時にアカデミーに入門。並外れた身体能力で、260~270ヤードのドライバー飛距離があり、昨年は優勝争い(最終的に3位)も経験しているだけに、近い将来日本を背負って立つ選手になるとの期待が寄せられている。
一方アカデミーに入門したものの、思うような結果が出せずに、退団していく若者も中にはいる。
上記の5人と同じ才能のある選手でありながら何が違うのだろう。
師匠尾崎がその疑問に答えてくれた、
「うちに来る生徒の8割は親が一方的にやらせて、子どもは何もわからないままにそれに従っているケースが多い。それは一つのきっかけではあるんだけど、最終的には本人のやる気次第。将来のはっきりした目標、イメージを持っている子は、自分でいろんな気づきを発見する」
「笹生や原、西郷、佐久間、小林は自分が何をすればいいかを自覚していた。彼女たちは課題をはっきり見つけ、自分なりの工夫をし、自分自身で納得いくまで練習していた。またそれを達成させてやるには親の協力だけではなく、外部の適切な指導が必要。それが私の役目であり、そうした環境を提供しているのがアカデミーなんだよ」
尾崎は自分が魔法使いでも、スーパーマンでもなく、子供たちの夢を叶えてあげるための助言や、適切な指導をするための脇役と割り切っている。
きちんと目標を持っている前述の5人は時に厳しく指導しても、それが自分のためと理解しているから、プラスに捉える。
一方球を打つことしか考えない子どもは、クラブをとっかえ、ひっかえ打ち、それが練習と思っている。厳しさには耐えられない。
ゴルフは同じことを繰り返す「忍耐力」が一番大事と尾崎は力説するが、それでは楽しくないという子どもは辞めていく。それが現実だ。でもそれもゴルフの一面と尾崎は割り切る。
「そもそもアカデミーはトッププロを育成するためだけに開いたわけじゃない。学ぶため(ゴルフ上達)のいい環境を提供したいというのが第一の目標なんだよ」
これこそがゴルフを、人間を愛する尾崎の優しさといえる。(敬称略)
=ゴルフジャーナリスト・宮崎紘一