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SPORTS BAR 古江彩佳の初メジャー制覇に隠された思い 東京五輪の道を断たれ…〝逃避先〟にした「エビアン選手権」 同じ場所で初戴冠

zakzak by夕刊フジ 2024年7月17日 6時30分

ゴルフの「帝王」、ジャック・ニクラウスの言葉がある。「不遇な時期こそ、幸運な時期なのだ」と。WOWOW中継で見た女子ゴルフの古江彩佳(24)が実践していた。14日に最終日を迎えたメジャー第4戦「エビアン選手権」(仏エビアンリゾートGC)で逆転優勝した。

「こうやって優勝できたことがすごく自信になる。ひとつの壁を破れたのはすごくうれしいなと思います」という会見での言葉。首位に2打差で迎えた後半、14番で10メートル、15番で12メートル、16番で3・5メートルのバーディーパットを沈め、最終18番でイーグル。終盤5ホールで5つスコアを伸ばした。まるで神が乗り移ったかのようだが、そこには古江の強い思いがあった。

3年前、人生を変えた大会

3年前は失意のどん底にいた。2021年の目標に掲げた東京五輪の道を断たれ、「まるで魂が抜けたようになっていた」と母・ひとみさんは表現。五輪期間中は逃避行のように海外へ飛び立った。

母の勧めでエントリーした7月「エビアン選手権」で4位、8月「AIG全英女子オープン」で20位と結果を残した。

当時は海外志向はなかったが、12月の米ツアー最終選考に挑み22年米ツアー切符をつかんだ。年明け1月には渡米し、一時帰国は6月の「ニッポンハムレディス」(北海道、26位タイ)。初の海外生活は5カ月に及んだが、「すごく楽しい。食事も生活も全く気にならないんです」と笑った。

海外が馴染む―古江にとって新発見だった。再渡米後、7月「スコットランド女子オープン」で初優勝。米ツアー上位の常連になった。3年前の〝逃避先〟、「エビアン選手権」で人生が変わって、今年同じ場所でメジャー初戴冠。まさにニクラウスの言葉にある「不運こそ、幸運な時期…」である。

今季17戦、トップ10入りは優勝を含め9度。153センチの小柄で、スタッツを見るとドライバーの平均飛距離250・75ヤードは122位と劣るが、平均スコア69・89、バーディー数237、アンダーパーラウンドは44、スコア60台ラウンドは28…などズラリとランキング1位が並ぶ。ゴルフの精度の高さ、緻密さが古江の強みである。年間ポイントランキングで堂々の2位もうなずける。

こんな古江には、タイガー・ウッズの言葉も似合う。「何度か試練をくぐり抜け、学び、成長すると、自分を信じられるようになるんです」―。 (産経新聞特別記者)

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