1984年にスタートした「新語・流行語大賞」。記念すべき第1回の新語部門で金賞をとったのが「オシンドローム」だ。
NHK連続テレビ小説「おしん」と「シンドローム(症候群)」をくっつけた言葉は、米フリー記者のジェーン・コンドン氏が「タイム」紙に載せたもの。それだけ「おしん」(83年4月~84年3月)が社会現象になったということだ。
この時代、まだテレビは流行の発信源として影響力があった。その象徴がCMだろう。この年、CMから爆発的に流行したのが「エリマキトカゲ」だ。首の周りのひだを広げて、2足立ちしてよたよたと走る姿が人気を得たのだが、これは三菱自動車「ミラージュ」のCMから。
「道は、星の数。」というキャッチフレーズを覚えている人はどれぐらいいるだろうか。CMのブレークぶりに比べて、ミラージュ自体はさほど売れなかったとも言われているのは皮肉な話だ。
このころは、CMのキャッチフレーズ自体が流行語になることも少なくなかった。
「ガンバレガンバレ玄さん!」は、キッコーマンのインスタント玄米雑炊のCMから広がった。かわいらしい女の子が、このフレーズを一生懸命に言うのだが、この子は子役だった間下このみ。
言い間違えて照れる愛くるしい姿で一躍人気子役スターとなった間下はこの年のドラマ「スクール☆ウォーズ~泣き虫先生の7年戦争~」(TBS系)で主人公の滝沢(山下真司)の娘役を演じる。さらに翌年にはバラエティー番組「所さんのただものではない!」(フジテレビ系)でレギュラーを務める。
もうひとつ、話題を集めたCMが「キンチョーどんと」だ。現在も販売されている「大日本除虫菊(KINCHO)」の使い捨てカイロだが、西川のりおと桂文珍が古代人に扮装(ふんそう)して、ちらつく雪の中でこごえそうになりながら言うせりふ。
「ちゃっぷい、ちゃっぷい。どんとぽっちぃ」
この年は東京で50回近くも雪が降るという厳冬だったという。寒空の下、手をこすりながら「ちゃっぷい、ちゃっぷい」と言って、通学していた小学生の何と多かったことか。
しかも当時、このせりふが本当の古代語(弥生語)にかなり近いということも話題となった。
■1984年のCM この年は「どんと」以外にも「ハエ・カ退治にキンチョール!」や「ほんまかいな、そうかいな」といった大日本除虫菊のCMが数多くヒットした。