2週前の拙コラムで、最後にこう書いた。
「WS(ワールドシリーズ)では43年ぶりに実現した東西の名門対決。敗れた方が、巻き返しに躍起となる」
ご存じのように涙をのんだのはヤンキース。ヤンキースタジアムで拙守を重ねて敗退が決まった第5戦後は、40分もクラブハウスのドアが閉ざされたという。
ア・リーグ最高の勝率・580(94勝68敗)をマークした今季のチームは総得点でリーグ1位、防御率3・74は同4位と投打のバランスもよかった。松井秀喜外野手がWSのMVPに輝いた2009年以来の頂点へファンの期待も高まっていただけに落胆も大きかった。
オフに入ると、アーロン・ブーン監督(51)に対して球団側が保持していた契約更新権を行使して8年目となる来季の続投が決まった。通算153勝のエース右腕、ゲリット・コール投手(34)の契約破棄騒動は1日で終息。当初と同じ4年総額1億4400万ドル(約223億円)で残留することになった。
ここまでは順調だが、最大の補強ポイントはフリーエージェント(FA)になったフアン・ソト外野手(26)の引き留めだ。パドレスから移籍1年目の今季は打率・288ながら、自己最多の41本塁打を放ち、3番打者・ジャッジ(32)とのコンビでリーグ1位の128得点を稼いだ。
同地区のブルージェイズやレッドソックス、同じニューヨークを本拠地にするメッツも獲得に名乗りを上げており、ソト争奪戦では不利とみている。まだ26歳と若いため、10年以上の契約を要求するのは確実。リスクの高い長期契約を避ける傾向があるヤ軍の編成責任者、ブライアン・キャッシュマンGMが、どこまで譲歩するかが鍵になるだろう。
ソト流出となれば、右打者のジャッジ、ジャンカルロ・スタントン外野手(35)とコンビを組む左の強打者の補強が急務になる。FAになる投手が多い救援陣の再編も今オフの課題だ。
断トツの27度もWSを制覇している名門だが、最後の世界一からは15シーズンも遠ざかっている。球団創設の1903年から23年の初制覇までの20シーズンを除くと、79―95年の17シーズンに次ぐワースト2位のブランク。王者の輝きを取り戻せるかは、このオフの動きにかかっている。 (元全米野球記者協会理事 田代学)