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ニッポン放送・飯田浩司のそこまで言うか! 中国軍機の領空侵犯、危機に晒されているのは男女群島だけではない 東シナ海でも緊急発進、南西諸島にも警戒を

zakzak by夕刊フジ 2024年9月4日 6時30分

中国軍のY9情報収集機1機が先月26日(月曜)、長崎県男女群島沖の日本領空を侵犯したことが確認されました。これに対し、航空自衛隊は西部航空方面隊の戦闘機を緊急発進(スクランブル)させ、通告および警告を実施するなどの対応を実施したとのことです。

海に関しては、軍の艦艇であっても領海を通れる無害通航権がありますが、空にはそうした権限は設定されていません。領空の飛行には領域国の許可が必要となります。そして、航空機はその特性上高速で飛行しますから、相当程度手前から警告しなければ一瞬で領空に達してしまいます。

それゆえ、防空識別圏(ADIZ)というものが設定され、意図不明機が圏内に進入してきた時点で通告を出し、さらに領空に接近してきた場合には、さまざまな形で「領空侵犯の恐れあり」という警告を発します。

統合幕僚監部のプレスリリースでは「通告及び警告を実施する等の対応を実施した」とされています。今回も作法に則(のっと)って、まずは遠隔からの無線通告、進路変更の要請、さらに戦闘機をスクランブルさせて目視確認、戦闘機からの無線警告、翼を振って当該機に「我に続け」と合図する警告行動などを行ったものとみられます。

それでもなお、意図不明機が領空から退去しない場合には、実弾を用いての警告射撃となりますが、今回はそこまでは至らなかったようです。

ネット上では、「なぜ警告射撃を行わなかったのか?」「撃墜すべきだった!」「岸田文雄政権の弱腰だ!」といった意見が盛り上がりました。侵犯翌日の木原稔防衛相の閣議後会見でも、記者からそうした質問を受けていましたが、木原氏は冷静に、「対応に万全を期す」との答えに終始しました。

他方で、この男女群島の事案と合わせて、統合幕僚監部のX(旧ツイッター)では27日午後、「また、東シナ海において領空侵犯のおそれがあったため、空自南西航空方面隊の戦闘機が緊急発進し、対応しました」との一文が添えられていました。

南西航空方面隊は那覇基地に司令部を置く部隊で、南西諸島すべてが担任地域です。本州がスッポリ入る広さをカバーしています。この東シナ海での緊急発進は数が圧倒的に多いのに、南西航空方面隊には2個飛行隊しか属していません。これでも2016年の組織改編で増やしたのですが、常にフル回転状態であると言われています。

かつてこの地を取材した際、ある自衛隊関係者は「有事には中国軍は南西諸島を海上・航空封鎖してきますよ」と分析していました。島々への補給を断つことで、抵抗の意思を削(そ)ぐのが狙いだというのです。

同じタイミングで東シナ海の北と南で動く中国軍の航空機。もちろん、領空侵犯ですから深刻なのですが、男女群島の事案だけに目を奪われていると、大きな絵図での分断を見逃してしまうかもしれません。

■飯田浩司(いいだ・こうじ) 1981年、神奈川県生まれ。2004年、横浜国立大学卒業後、ニッポン放送にアナウンサーとして入社。ニュース番組のパーソナリティーとして、政治・経済から国際問題まで取材する。現在、「飯田浩司のOK!Cozy up!」(月~金曜朝6―8時)を担当。趣味は野球観戦(阪神ファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書など。

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