テレビドラマや映画で演技の研鑽(けんさん)を積み、女優としてのステップを駆け上がっている。バラエティー番組で見せてきたチャーミングな笑顔は変わらないが、内心ひそかに「自分の殻を破りたい」との願望を抱いている。
「安定志向なので、『ここまでできれば合格だろう』という枠をつくってしまっている気がするんです。安定を求めるのではなく、そこから飛び出したいと考えるようになってきました」
芝居にある「パズルの快感」
1歳で子役モデルとしてデビューし、すでに20年以上のキャリアを持つ彼女。今は演技の世界に夢中だ。魅了されたきっかけは、2020年の主演ドラマ「女子高生の無駄づかい」(テレビ朝日系)だという。
「撮影中、台本上のセリフはあるものの、みんなでアドリブ合戦になったことがあったんです。台本を読んで1人で作り込むだけでは生まれなかった面白さがありました。積み重ねてきた準備と現場の空気感が合わさって、めっちゃいいものが生まれた瞬間を体験できたんです」
撮影現場では演技の方向性がガラリと変わり、事前の役作りがリセットされてしまうことも。「でも、それでいいんです」とほほ笑む。
「現場で得られたものこそがすべてだと臨むようにしています。役作りはしてもカチカチに固めず、柔らかい状態にしておいて、他の共演者との芝居で増幅できるようにと心がけています。うまく言語化できないんですけど、芝居にはパズルのピースが合わさる瞬間みたいなのがあると思っていて。共演者たちと合致したとき、めっちゃ気持ちいい! 毎回100点満点以上のものが出せたらいいのですが、難しい。だからこそ追い求めているんだと思います」
瞬発力とコミュ力生かして
長くエンターテインメント界に身を置くことで身に付いた瞬発力とコミュニケーション力がいきているようだ。
「スタッフさんとの距離感を近くして、積極的に『教えてください!』とコミュニケーションを取るようにしています。人と人との関係性がお芝居にも反映すると思いますし、人の部分を豊かにする。いい思い出をつくりたいですしね」
出演映画最新作は、15日公開の「他人は地獄だ」(児玉和土監督・脚本)だ。韓国発のウェブコミックが原作のサスペンスホラー。地元での生活に閉塞(へいそく)感を覚えていた主人公のユウ(八村倫太郎)は、上京して格安シェアハウス「方舟」に流れ着く。そこで出会ったのは、えたいの知れない奇妙な入居者たち。不安を覚えながら共同生活を始めていくのだが…。
「ゾクゾクするような恐怖が続きますが、ちりばめられた伏線が最後の最後で回収されていく面白さもある作品です。もう1回最初から見ないと分からないと思えるほど入り組んだストーリーで、地獄のような人の闇の部分が描かれています」
演じたのはユウを気遣う優しい性格の恋人、メグミ。原作漫画や台本を読むうちから、その恐怖世界に引き込まれたという。
「ホラー作品は独特の間や撮影方法を勉強するために定期的に見るようにしてはいるんですが、それでもやっぱり怖いものは怖い!」
ちなみに自身にとっての〝地獄〟とは、と向けると、「絶対に面白いと思って言ったボケがすべること! いまだにあるし、この先も生涯つきまとうでしょうね。逆に、ボケやツッコミをうまく調理してもらえると、『生きていてよかった!』と思えるくらい〝天国〟です」とバラエティー巧者ならではの回答。「バラエティーと演技、たとえ割合は変わるにしても、どちらも地道に頑張り続けたい」というのが目標だ。
さらに「舞台のお仕事も経験したいですね。これまでお世話になった人やファンの皆さんに、直で自分のお芝居を見てもらえる機会をつくれれば」と意欲満々。
自らの演技力を磨き上げ、真のエンターテイナーへと進化の予感だ。
(ペン・磯西賢 カメラ・相川直輝)
出演映画「他人は地獄だ」15日公開
■岡田結実(おかだ・ゆい) モデル、タレント、女優。2000年4月15日生まれ、24歳。大阪府出身。幼少期からジュニアモデルとして活躍し、17歳で映画「傷だらけの悪魔」に出演して女優デビュー。2021年のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」では、ヒロインに冷たい態度を取る女中役を好演したことで話題を呼んだ。バラエティー番組や情報番組にも多数出演中。癒やしの存在は愛猫「ぶる」(4歳、オス)。