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ノマドの窓~渡る世間はネタばかり~ 飽和状態の〝食べ歩き番組〟この手があったか! 角野卓造×近藤芳正「おやじ京都呑み」のゆるやかな酔い心地

zakzak by夕刊フジ 2024年10月16日 11時0分

「グルメ食べ歩き系の番組、あとどんな企画があるだろうか?」。そんな内容のことをこのコラムに書いたのは、今年の2月のことだ。

それを綴ったきっかけは、僕のような放送作家にとって大切な各放送局からの「企画募集」に添えられた1行だった。「これこれこんな方向性のものを求む」という説明の後に<街歩き系・グルメ旅系は飽和状態なので不可>とあるのがここ数年目についたからだ。

確かに、途中下車したり、買い食い立ち食い満喫したり、行き当たりばったりで散歩したり(※そのいずれも決して〝行き当たりばったり〟ではないのだが)というような番組はすでにおなかいっぱいだけれど、ひと言で「もういいです」と言うのはないでしょうと。この手があったか、という企画があるはず、と書いた。

そして…あったのだ!ご存じかもしれないが、KBS京都が制作、BS11ほか各局で放送中の「おやじ京都呑み」がそれ。

初回放送が2022年6月なので、2年以上前である。で、8月に放送された最新回が第13回だから、2カ月に1本というのんびりペース。そこも含めて、その魅力について語ってみよう。

まず<京都呑み>とその範囲を京都に絞ったこと。京都という言葉そのものが持つ吸引力には計り知れないものがある。

さぁそして次が肝なのだ。<おやじ>。

いまさら「その手があったか」というような絞り込みでは決してない。ただ、出演者として選ばれた2人があまりにも意外で、とてつもない化学反応を起こす組み合せだったのである。

角野卓造と近藤芳正。共に日本を代表する名優だ。例えば、旅番組に〝今回の旅人〟としてゲストキャスティングするのは大いにありだろう。しかし「おやじ京都呑み」は2人がメインキャストなのだ。

京都が大好きで『予約一名、角野卓造でございます【京都編】』(京阪神エルマガジン社刊)という、続編もある京都の名店ガイドを出しているほどの角野卓造。

そして、京都が好きで4年前に移住した近藤芳正。

加えて、共にお酒が好きなおやじ、ということで毎回のお楽しみ感が半端ではない。何ひとつ遠慮のない角野トークにはおそらく誰もが驚嘆し魅了されるだろう。〝おしゃべり上手〟というのはこの人のことを言う。

そんな相方を持った近藤さんも、テレビだからと格好つけることなく、安心しておやじトークを繰り広げていればいいから、いつも幸せそうな笑顔を届けてくれている。2カ月に1本というペースも番組に合っている。数あるグルメ旅系の中でも、上質の番組としておすすめしたい。

■東野ひろあき(ひがしの・ひろあき) 1959年大阪生まれ、東京在住。テレビ・ラジオの企画・構成(FM大阪「森高千里ララサンシャインレディオ」)、舞台脚本(「12人のおかしな大阪人」)やコンサート演出(松平健とコロッケ「エンタメ魂」)、ライブ企画・構成(「小室等de音楽祭」)、コメディ研究(著書『モンティ・パイソン関西風味』など)。猫とボブ・ディランをこよなく愛するノマド。

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