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日台海保、房総半島沖で合同訓練 背景に不穏さ増す中国の動向 「自衛隊と米軍、台湾軍の連携も要求される可能性も」島田洋一氏

zakzak by夕刊フジ 2024年7月19日 14時30分

中国の覇権主義的な海洋進出に警戒感が強まるなか、海上保安庁と台湾海巡署(海保に相当)が合同訓練を行った。1972年の日台断交後、両機関の合同訓練が明らかになるのは初めて。中国の動向は不穏さを増しており、「台湾有事」が勃発すれば「日本有事」に直結する。対中強硬派のドナルド・トランプ前米大統領が復活する可能性も高まっている。日本政府は、周辺国・地域との連携強化や、法整備などを急ぐ必要がありそうだ。

トランプ復権も念頭

政府関係者や台湾メディアによると、日台の海上保安当局は18日午前、千葉県・房総半島の南の海上で、捜索や救助などの合同訓練を行った。海上保安庁からは巡視船「さがみ」が参加した。

台湾の海巡署は同日、巡視船「巡護9号」が日本で燃料や食料の補給作業を行い、海上保安庁と遭難救助訓練を実施したと明らかにした。台湾巡視船は、公海での漁船保護活動の一環で日本に立ち寄ったという。10日には台湾巡視船が東京港に立ち寄り、燃料補給などをしていた。

合同訓練は、日台の窓口機関が2017年に交わした「海難捜索救助分野の協力に関する覚書」に基づき実施された。訓練の背景は何か。

政府関係者は「今年5月、台湾で頼清徳政権が誕生した後、中国は台湾を取り囲むような軍事演習を常態化させるなど、圧力を強めている。沖縄県・尖閣諸島周辺で相次ぐ領海侵入も深刻だ。日本と周辺国・地域との連携は不可欠だ」と語る。

元軍人の台湾侵入も

確かに、中国の動向は不気味だ。

今年6月、台湾北部の河川(淡水河)に小型船が沖合から侵入し、海巡署が中国籍の男を逮捕した。台湾当局の調べで、この男は元中国軍少佐だったことが判明した。

現場は台湾総統府などがある台北中心部から約20キロで、「安全保障上、極めて憂慮される事態」との声があがった。国際法や外交ルールなどの「グレーゾーン」を突き、台湾の出方を探ったとの見方も浮上した。

過去1年間で、類似のケースが18件発生しているとの報道もあった。日本も同様の危機にさらされる恐れがある。

今後の課題は何か。

国際情勢に詳しい福井県立大の島田洋一名誉教授は「日本周辺の情勢は風雲急を告げている。トランプ氏が米大統領に復活すれば、中国の覇権主義に、より厳格な対応を取るだろう。今回は、日台の海の警察機関の連携強化だが、今後、自衛隊と米軍、台湾軍の連携強化を求められる可能性がある。『台湾有事』が勃発すれば、日本の『憲法の制約』という事情に関係なく、先島諸島などは有事に巻き込まれる。日本は憲法改正をはじめ、安全保障関連の法整備や防衛力強化が急務だ。日本政府や与野党はもっと危機感を持つべきだ」と指摘した。

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