新年なにか目標でも立てようかと考え、「個人的研究テーマ」を決めることにしました。で、ここのところテレビ業界で気になることはなんだろう…と思いをめぐらせてみて浮かんだのは、「オッサンやオバハンの過剰な自信を武装解除するにはどうすればよいか」ということでした。
具体的にお名前を出すのは避けますが、結構な大御所がここのところ「やらかしてテレビから消えていく」という事態が頻発してますよね。そして出演者だけではなく、私の周囲にいる「裏方の業界人」たちにも、後輩たちにウザがられているのにそれにまったく気づかず、評判を落としているような人が多くいます。自分の武装解除に失敗し、引き際を誤って晩節を汚す、というやつです。
自分自身も大いに反省するところですが、得てして50代は「まだまだオレはイケている。若いものには負けない」的な根拠のない自信を持ちすぎていて、それが原因となって「やらかしてしまう」場合が多いのではないでしょうか。
ご本人は「かっこいいオレ」みたいなつもりでいても、若い人から見れば「ウザい、キモい、めんどくさい」の三拍子そろった「完全無欠の困ったオッサン」ですから、その自己評価と世間の目のギャップが問題を引き起こしている主要な要素だと思えるんです。
「大スターのオレ様を嫌がる女性なんかいるわけがない」的な勘違いとか、「大御所のオレ様が考えた番組は最高に面白い」みたいな幻想を持ちつつ若年層の障壁と化している人が、50代の「勝ち組業界人」のかなりの部分を占めるのではないでしょうか。
じゃあ引退しちゃえばいいか、というと、50代はまだお金を稼がねば暮らしていけない場合が大部分ですから、そうもいかない。これが悩ましいところです。いかにうまくオッサンを武装解除するか、そしてその上で兵力として弊害なく活用していくか、というのは日本社会の大きなテーマとなるかもしれませんよね。
個人的には50歳でテレビ局を辞めて一線から引いた上で、チョコチョコいただいた仕事をしてますが、ある意味「50歳以上はバイトでいい」という気が最近してきました。決定権や地位は完全に放棄する。その上で仕事は「若い人の指令に従いつつ粛々と口を動かさず身体を動かす」といったあたりが正解なのかもな、と思います。
この連載はあとわずかで終了しますが、オッサン武装解除の方法論について今年は深く掘り下げていこうと思いますので、よろしくお願いします。
■鎮目博道(しずめ・ひろみち) テレビプロデューサー。1992年、テレビ朝日入社。「スーパーJチャンネル」「報道ステーション」などのプロデューサーを経て、ABEMAの立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」などを企画・プロデュース。2019年8月に独立。新著『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)が発売中。