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マネー秘宝館 会社員にもフリーランス・マインドが必要 今の会社を辞められる人間になれるか、転職・独立したら「いくら稼げるか?」を考える

zakzak by夕刊フジ 2024年11月20日 15時30分

某大企業から研修依頼を受けました。お題は「フリーランス・マインド」。会社に依存しすぎることなく自ら主人公として働くこと。雇用形態はサラリーマンでもフリーランス精神をもって働きましょう、とそんな内容です。

何でも任意受講だそうで、20代から60代まで幅広く参加希望者がいらっしゃるとのことでした。このようなフリーランス・マインド的な研修依頼は数年前からぼちぼち頂いておりますが、ここ数年、一気に対象者が「若年化」したように感じます。

かつて「会社に寄りかかり過ぎぬよう気を付けましょう」といった内容の研修は定年前の方を相手に行われていました。会社を辞めると朝起きても行く場所がなくなり、上司も部下もいなくなります。やることがなくなって趣味に時間を費やすしかない人生、それは辛いので定年前から「社外の友人」をつくりましょうね、といった黄昏(?)的な研修。

それが10歳ほど若年化したキッカケが役職定年や早期退職制度の導入でした。40代の後半以上の方に対して「給料が上がり続けたのは昔の話、これからは無理です」と経済環境を説明しつつ、各自で身の振り方を考えてほしいという寒波到来的な内容。

そしていまは20代や30代に向けて「自ら主人公として自立的に働いてほしい」というメッセージを会社が発信し始めています。それを若い彼らも歓迎している模様。なぜなら若者たちもぬるま湯より、厳しくても「成長できる仕事」を求めているからです。

安定よりも成長できるか否か、つまり「今の会社を辞められる人間になれるかどうか」、この感覚が若年層に登場しています。

会計的に言えば、これは原価から時価への転換です。会社のオジさんたちは原価主義人間が圧倒的に多い。原価とはそこに費やしたお金の量で測る思考、100万円払って買った車の価額を100万円とする考え方です。そこでは「費やした努力」が重要なのです。だから「俺はこんなにがんばった」とか「若い頃は寝ないで仕事した」ことを吹聴し、そこに価値を置く人は原価主義人間です。

一方、若い人たちは時価主義人間です。時価とは「いま持っている車を売ったらいくらか」という出口側を見ます。100万円の原価であっても、中古車屋に売却したら30万円であれば時価は30万円です。今の会社を辞めて転職・独立したら「いくら稼げるか?」をみている若者たちは時価主義人間だということです。

原価主義から時価主義へ。会計界でもその流れがありますが、これはどちらが優れているということではありません。どちらにもメリットとデメリットがあります。たまたま今は時価主義優勢というだけのことです。ただし、そのトレンドは事実として理解しておいた方がいいでしょう。「こんなにがんばったのに」という原価より、「結果の稼ぎ」=時価が重視される世の中。厳しいし、悔しいですが、だからこそ結果を出してやりましょうよ、ご同輩!

■田中靖浩(たなか・やすひろ) 公認会計士、作家。三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社勤務を経て独立開業。会計・経営・歴史分野の執筆・講師、経営コンサルティングなど堅めの仕事から、落語家・講談師との共演、絵本・児童書を手掛けるなど幅広くポップに活躍中。「会計の世界史」(日本経済新聞出版社)などヒット作多数。

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