ホンダと日産自動車の経営統合協議をめぐり、背後に海外勢の影が漂っている。台湾電子機器受託大手で、電気自動車(EV)も手がける鴻海(ホンハイ)精密工業が日産の買収を提案しているとされ、これがホンダと日産の統合協議入りを急がせたとみられる。ホンダと日産は23日にも正式発表する方向だが、事態によっては「争奪戦」に発展する可能性もある。
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〝お買い得〟の見方
統合には、日産と企業連合を組む三菱自動車も合流する見込みで、持ち株会社を設立し、傘下に入る方向で検討するという。ホンダと日産、三菱自の3社は「各社の強味を持ち合い、将来的な協業についてさまざまな検討を行っている」と発表した。
日産は米国や中国での販売不振が深刻で、2024年9月中間連結決算の純利益は前年同期比93・5%減だった。
経営が悪化した日産に目を付けたのがシャープを子会社に持ち、米アップルのiPhone(アイフォーン)などの受託生産で急成長した鴻海だ。すでに商用車などでEV事業を手がけ、25年には乗用車の量産も計画している。
鴻海・EV事業トップに日産出身のキーマン
EV事業のトップを務める関潤氏は、日産のナンバー3である副最高執行責任者(COO)や、モーター大手の日本電産(現ニデック)社長を経て、鴻海に入社しており、日産買収を検討するチームの中心にいるとの観測もある。
自動車販売台数で世界8位日産だが、時価総額は18日時点で日系自動車9社中6位だ。ホンダとの統合協議入りの報道を受けて同日にストップ高となったが、それでも〝お買い得〟との見方もある。
日産株はルノーが直接約16%保有するほか、信託会社を保有分を含めると35%に達するとみられる。
ほかにも旧村上ファンド系とされるファンドも日産株を保有しており、こうした株主との交渉も必要となる。
経済安全保障アナリストの平井宏治氏は「鴻海としては、日産のインフラを手中に収めればEV事業の拡大が期待できる。また、『モノ言う株主』やファンドにとっては、株価が安いうちに購入し、売り抜けできるため、日産はおいしい会社だ。持ち株会社化するまでに、争奪戦が繰り広げられるのではないか」と指摘した。