「カップインできなくても構いませんよ」
坂本コーチに言われた左打ちでのパッティング。思ったより難しい。フィル・ミケルソンが頭に浮かんだ。うまくは打てなかったが、すべてが新感覚だった。
「では、本来の右打ちでパットしてみましょう」
促されて、アドレスを取ってみると景色が変わった。左打ちのアウェイからホームに戻った気分。狙ったラインに沿って正しく構えられ、スムーズにパターヘッドを動かせそうに感じる。1メートルのパットが簡単に思えた。不思議な感覚だった。
坂本コーチはカップから5、10、15メートル地点にボールを置き始めた。
「小さなストローク幅でカップインさせてみてください」
具体的には時計の7時から5時までの同じ振り幅で、距離を打ち分けるドリル。ヘッドのスピードでタッチを出すのだという。15メートルは届かなそうに思えたが、思い切り小さく鋭く打つと、15メートル先のカップをオーバーした。
それにしても、こんなドリルがスイング作りに果たして役立つのだろうか? そんな思いが顔にも出ていたらしい。
「紙くずをゴミ箱にほうり投げるとき、ポンと入れることだけをイメージして、腕の動かし方や腕振りのスピードなどは考えませんよね。自分の感覚を最優先させて投げているはずです。ゴルフは感覚を生かしてこそ、イメージを現実化できるゲーム。ですから、イメージと感覚を研ぎ澄ますことが上達の秘訣なのです」
左打ちパットや、同じ振り幅での距離を打ち分けは感覚を磨くためのドリルだ。
「実は7時から5時までのストロークがスイングの凝縮型であり、これを極めることでショットも精度が高まるのです。よく見ていてくださいね」 (つづく)
■坂本博之(さかもと・ひろゆき)1970年9月3日生まれ、東京都出身。二輪国際A級プロレーサーとして活躍後、ゴルフに転向して2017年にPGAティーチングプロA級資格を取得。独自の器具での練習方法を考案し、第12回PGAティーチングアワード最優秀賞を受賞。レーサー経験を生かしたユニークなレッスンが注目を集めている。スウィングデザイン#19所属