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列島エイリアンズ ヤミ民泊編(1)晴海フラッグを1泊約3万円で貸す在日中国人 無数に設置「キーボックス」の謎 ザル状態だった自治体の規制

zakzak by夕刊フジ 2024年7月3日 11時0分

東京五輪の選手村を住宅に転用した「晴海フラッグ」(東京都中央区)周辺の柵や信号機の柱などに、謎の「キーボックス」が無数に設置されていることが分かり、住民らの不安を募らせている。

これらのキーボックスは、番号式南京錠を大きくしたような形状で、内部に鍵を収納することができるものだ。チェックイン・アウトにホスト側が立ち会わない家主不在型の民泊で、部屋の鍵の受け渡しに利用されている。

しかし、晴海フラッグには正規に登録されている民泊物件は現時点で存在しておらず、管理組合の規定でも民泊営業が禁止されている。さらに大手民泊予約サイトの「エアビーアンドビー」で地図検索をかけてみても、晴海一帯には一軒も物件が表示されない。

晴海フラッグが所在する中央区は、民泊営業に対する規制が都内においても厳しい自治体として知られている。例えば、区に届け出をしている正規の民泊事業者も、「土曜日正午から月曜日の正午まで」しか、客に宿泊をさせることができない。

ただ、違法なヤミ民泊であれば、ひそかに営業されている可能性がある。事実、「小紅書」をはじめとする中国のSNSには、晴海フラッグと思われる物件を宿泊施設として貸し出す投稿が散見される。

筆者は、正規に営業している中国系民泊事業者の紹介を経て、晴海フラッグに保有する物件を、第三者に有償で貸し出している在日中国人、W氏に行き当たることができた。

W氏は、5000万円台で購入した晴海フラッグの60平方メートルの部屋を1泊約3万円で貸している。しかも、10月末までほぼ満室という人気ぶりだ。鍵の受け渡しには冒頭のキーボックスは利用しておらず、近隣にあるデジタル式コインロッカーを利用しているという。物件の鍵をロッカーに預け、その際に発行されるQRコードをSNSアプリなどで宿泊者に送信。宿泊者は、そのQRコードでロッカーを開錠し、鍵を受け取ることができる。

ただ、W氏は、自身の物件がいわゆる「ヤミ民泊」であることを明確に否定した。

「うちは、最低2週間からの短期賃貸で、そもそも民泊ではない」(W氏)

そんな言い分が通用するのか。筆者は中央区で民泊を管轄する部署の担当者に確認したところ、「例えば、1カ月を超えて貸し出すような場合には、どちらかというと短期貸借に相当し、民泊事業という扱いにはならない」と回答があった。

では、2週間なら民泊かというと、「明確な基準はないので何とも言えない」と担当者。

民泊事業に対する厳しい規制の一方、言い逃れができてしまう状況なのだ。 =つづく

外国人材の受け入れ拡大や訪日旅行ブームにより、急速に多国籍化が進むニッポン。外国人犯罪が増加する一方で、排外的な言説の横行など種々の摩擦も起きている。「多文化共生」は聞くも白々しく、欧米の移民国家のように「人種のるつぼ」の形成に向かう様子もない。むしろ日本の中に出自ごとの「異邦」が無数に形成され、それぞれがその境界の中で生きているイメージだ。しかしそれは日本人も同じこと。境界の向こうでは、われわれもまた異邦人(エイリアンズ)なのだ。

■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に「ルポ 新型コロナ詐欺」(扶桑社)など。

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