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前立腺肥大症・最新治療 ずいぶんラクになった膀胱鏡検査 近年はフレキシブルに曲がる「軟性鏡」が普及、被験者の苦痛は劇的に改善

zakzak by夕刊フジ 2024年7月31日 6時30分

今回は前立腺肥大症のメカニズムを見て行く。まずは別項の「IPSSスコア」を試してほしい。これは「国際前立腺症状スコア」と呼ばれるもので、回答の点数から軽症、中等症、重症の区別が付けられる。言い換えれば、前立腺肥大症は、MRIなどの画像検査をしなくても、このスコアと問診だけで、かなりの部分が分かる仕組みなのだ。

四谷メディカルキューブ泌尿器科科長・阿南剛医師に聞いた。

「実際にはこれに加えて尿流検査と超音波検査を行います。尿流検査とは泌尿器科にある専用のトイレに向けて排尿することで、尿の勢いと量を計測する検査。そのあとで超音波検査をして、残尿量を測定します」

排尿前の尿量が200ccだったとき、排尿量が200ccなら問題ないが、100ccしか出ていなければ残尿感を覚えるのも当然。「何らかの治療が必要になります」

排尿機能が低下している場合、その原因を探るうえで重要な検査に「膀胱鏡(ぼうこうきょう)検査」がある。陰茎の先から内視鏡を挿入して、尿道と膀胱の内部を観察する検査だ。

これは必要に応じて行われる検査だが、患者の大半が嫌がるという。

「胃カメラや大腸内視鏡検査は平気な人でも、膀胱鏡は怖がります」

前立腺が大きいと膀胱に負担がかかり続けるので、本来開いているはずの尿道が狭くなってしまう。そこを無理に排尿させようとするので膀胱は排尿のたびに強い圧をかけようとし、結果として膀胱内部が傷み、本来の柔軟性を失っていくのだ。

「排尿するには、膀胱が正常に収縮することと、尿道が開いていることが前提。尿道を開けることは手術でできるが、収縮力を失った膀胱を回復させる治療法はない。膀胱は一度傷んでしまうと戻らない」というから厄介だ。

膀胱鏡検査は、熟練した医師なら3分ほどで終わる。尿道に「ゼリー麻酔」を使用するのみで、胃カメラの無痛検査のような鎮静剤は使わない。患者は鮮明な意識があるので、モニターに映し出される自らの膀胱や前立腺を、医師と一緒に観察しながら検査を受けることになる。

いまから15年以上前にこの検査を受けた経験のある人は、耐えがたい苦痛を経験したはずだ。当時は「硬性鏡」という硬い棒状の、しかもボールペンよりも太い内視鏡を挿入されていたのだ。

しかし近年はフレキシブルに曲がる「軟性鏡」が普及し、被験者の苦痛は劇的に改善された。窒息感を伴う胃カメラや、膨満感を覚える大腸内視鏡検査よりも苦痛は小さい―という人も少なくないのだ。

かつて硬性鏡による検査を経験した人は、その記憶を消し去ってほしい。いまの膀胱鏡検査はまったくの別物だ。軟性鏡が普及した現代に生きることの幸運を享受すべきなのだ。 (取材・長田昭二) 【あすは「前立腺肥大症の最新治療法について」です】

■阿南剛(あなん・ごう) 四谷メディカルキューブ泌尿器科科長。2008年、名古屋市立大学医学部卒業。聖路加国際病院、東北医科薬科大学病院等を経て、22年4月から現職。専門は前立腺肥大症と尿路結石症の内視鏡手術。日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本排尿機能学会専門医ほか。

■国際前立腺症状スコア(IPSS) ※すべて「この1カ月間」を対象とした質問です。

① 排尿後に「残尿感」はありましたか

② 排尿後2時間以内にもう一度排尿することはありましたか

③ 排尿中に何度も「途切れる」現象はありましたか

④ 排尿を我慢することが難しいことはありましたか

⑤ 排尿時の尿の勢いが弱かったことはありましたか

⑥ 排尿をするのに「おなかに力を入れる」ことはありましたか

⑦ 就寝中に平均して何回「排尿のため」に目を覚ましましたか

※①~⑥の質問への回答で「はい」が多い人は前立腺肥大症の危険性が高く、⑦の質問は「起きた回数」が多いほど前立腺肥大症のリスクが高いので、検査を受けることをお勧めします。

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