ロッテは11日、ソフトバンクから国内フリーエージェント(FA)権を行使した石川柊太投手(32)の獲得を発表した。古巣を含む5球団の大争奪戦を制した勝因は、吉井理人監督(59)の頭脳プレーを駆使した説得だった。
近日に入団会見を行う予定の石川は、新天地の広報を通じて「ファンの皆さまに喜んでいただけるピッチングをする覚悟と勇気を持って戦う」とコメント。今オフに佐々木朗希投手(23)の米大リーグ移籍が確実なロッテは、先発ローテーションの穴を埋める補強が急務だったが、合意に至った3年総額6億円(推定)という契約が、他球団と比べて特別に高かったわけではない。
交渉前に石川の在京志向をつかみ、「うちにもチャンスがあることは分かっていた」と話すのは球団関係者。同条件の巨人、ヤクルトと差別化を図ることに腐心したといい、まずは吉井監督が自ら交渉に出馬することで〝情〟に訴えた。続いて〝理〟を説く段でモノを言ったのが、持参したマル秘データだった。
ロッテの本拠地ZOZOマリンで石川は今季3試合12イニング無失点。投手出身の指揮官は相性の良さの裏付けとして、幕張名物の海風がどのように石川の持ち球に作用し、他球場より有利に働いているかを、事前に球団アナリストに指示して準備してもらったデータをもとに詳細に解説した。そして最後は、「うちなら稼げるぞ!」と心に響く決め台詞で口説き落としたという。
活躍をイメージしやすい言葉で説得
パ・リーグ3球団と侍ジャパンで投手を指導してきたスペシャリストだからこそ、「活躍をイメージしやすい言葉を投げかけることができたのが最大の勝因」と前出関係者。情と理を巧みに投げ分けた吉井〝交渉人〟が大仕事をやってのけた。 (山戸英州)