日銀が発表した企業短期経済観測調査(短観、12月調査)で、大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス14で、9月のプラス13から若干の改善だった。
日銀短観では、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた企業の景況感を示す業況判断指数(DI)で景気を判断する。
大企業・製造業を業種別にみると、繊維、紙・パルプ、化学、石油・石炭製品、窯業・土石製品、非鉄金属、食料品、金属製品、汎用機械、生産用機械、業務用機械、電気機械、造船・重機、自動車がプラスだった。木材・木製品、鉄鋼はマイナスとなった。
9月調査からの変化幅については、紙・パルプ、化学、石油・石炭製品、汎用機械、生産用機械、自動車で改善した。繊維、非鉄金属、業務用機械は横ばいで、木材・木製品、窯業・土石製品、鉄鋼、食料品、金属製品、電気機械、造船・重機は悪化した。
改善した業種は、IT需要の回復や、原材料・エネルギー価格の上昇が一段落したことが理由だ。悪化した業種の要因は、海外需要の伸び悩みや、これまでのコスト上昇の影響というものだった。
大企業非製造業のDIはプラス33で、9月のプラス34から若干の悪化となった。
業種別では、建設、不動産、物品賃貸、卸売、小売、運輸・郵便、通信、情報サービス、電気・ガス、対事業所サービス、対個人サービス、宿泊・飲食サービスと全業種でプラスとなった。
しかし、9月調査からの変化幅については、建設、不動産、物品賃貸、運輸・郵便、通信で改善したが、卸売、情報サービス、電気・ガス、対個人サービスは横ばい、小売、対事業所サービス、宿泊・飲食サービスは悪化した。
改善した業種では、価格転嫁がうまくできたとの理由が多かったが、悪化した業種は人件費の上昇や人手不足などが理由となっている。
先行きをみると、大企業・製造業でプラス13、大企業・非製造業でプラス28となっており、それぞれ横ばいか若干悪化を見込んでいる。
大企業・製造業で先行き悪化を予想する企業は、主に海外需要の伸び悩みのほか、引き続き原材料・エネルギーコスト高を懸念。改善を予測する企業は、自動車生産とIT需要の回復を期待している。
大企業・非製造業の先行きはほとんどの業種が悪化だが、その理由は原材料価格・人件費の上昇への懸念だ。
なお、「雇用人員判断」について、中小企業・非製造業でマイナス48となった。これは1983年5月の調査開始以来、最大の不足超幅を更新し、相変わらず人手不足感が強い。
企業のインフレ予想を示す「企業の物価見通し」は、消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率で、1年後2・4%、3年後2・3%、5年後2・2%と前回調査から変わっていない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)