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ニュースの核心 総裁選〝3強〟と日本の未来予想図 石破氏、国会議員に支持者少なく 進次郎氏、国家観に危うさ 高市氏、核武装問題に斬り込んで

zakzak by夕刊フジ 2024年9月14日 10時0分

自民党総裁選は12日告示され、過去最多9人が立候補した。東京・永田町の党本部で同日午後、所見発表演説会が行われ、本格的な論戦がスタートした。「地方票(党員・党友票)」に近いとされる報道各社の世論調査では、石破茂元幹事長(67)と、小泉進次郎元環境相(43)がトップを争い、高市早苗経済安保相(63)が猛追する構図だ。ただ、3人の政治理念や政策は大きく違い、誰が次期総裁になるかによって「日本の針路」は大きく変わる。ジャーナリストの長谷川幸洋氏が考察した。

自民党総裁選の有力候補者は、各種報道によれば、どうやら石破氏と小泉氏、高市氏の3人に絞られたようだ。それぞれの候補が勝ったら、日本はどういう姿になるのだろうか。

まず、石破氏である。

彼は自民党内で「リベラル派」として知られている。総裁選では、アジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設や非核3原則のうち「核を持ち込ませず」を見直す考えを表明した。

これだけ見ると、まともそうだが、暗殺された安倍晋三首相が挙げた「総理にしてはいけない男」の1番手が石破氏であり、2番手が河野太郎デジタル相(61)だった。不祥事が起きると、すぐ現場の責任にするので、自衛隊の制服組にも評判が悪い。

先の中国軍機による領空侵犯事件では、「領空侵犯措置の対応は今のままでいいのか。結論を出すことは政府・自民党の使命だ」と語った。私には人ごとのように聞こえた。派閥解消を唱えながら、自ら派閥をつくり、それも人が集まらず、解散した経緯が示すように、国会議員にも支持者が少ない。

石破氏の推薦人は「有力候補から回してもらっている」という指摘もある。これでは決選投票に残ったところで、勝利はおぼつかないだろう。

小泉氏は目下、本命とみられている。

確かに、菅義偉前首相や、二階派の事務総長だった武田良太元総務相ら大物議員が推しているとなると、それだけでも地方票、国会議員票ともに相当数が集まりそうだ。

だが、選択的夫婦別姓に賛成し、「総理になったら、法案を提出する」と踏み込んだのは、どうしたわけか。夫婦別姓を認めれば、いくら選択的といっても、戸籍を基にした家族制度の根本が揺らぐ。

岸田文雄政権が、ジョー・バイデン政権のゴリ押しとも言える要求に応じて、LGBT(性的少数者)理解増進法を成立させたように、夫婦別姓問題の背後には、米民主党の意向があるのではないか。

彼らが信奉するリベラリズムの根幹には、「国家や家族よりも人種、性別、性的嗜好の違いを超えて『個人』を最重要視するイデオロギー」がある。これは日本の伝統、文化、歴史と相いれない。社会を不安定にさせるだけだ。

経済社会の非効率な部分を見直すのはいいとしても、もっとも大事な国家観に危うさを感じる。

高市氏、日本の核武装問題に果敢に斬り込んでもらいたい

高市氏は「日本列島を強く豊かに」と訴え、政策面でも安定感がある。麻生太郎副総裁が土壇場で支持に回る可能性が取り沙汰されているが、そうなれば、地方票だけでなく、国会議員票も積み増しが見込めるだろう。

あえて注文を付けるとすれば、彼女には、日本の核武装問題に果敢に斬り込んでもらいたい。安倍元首相はロシアがウクライナに侵攻した直後の2022年2月、テレビの生番組で「米国との核共有(シェアリング)を検討すべきだ」と訴えた。

中国、ロシア、北朝鮮という核を保有する独裁国家に囲まれた日本は、本当にあるかどうかも分からない「米国の核の傘」に頼っているだけでは、安全を確保できない。

出馬会見では、記者の質問を受けて最後に「(非核3原則の『持ち込ませず』について)しっかり議論すべきだ」と語った。それでも、腰が引けている感は否めない。保守派を自認するのであれば、安倍元首相の遺志を継いでほしい。

長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

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