地元出身政治ジャーナリスト・安積明子氏が解説
兵庫県の斎藤元彦知事(46)の「パワハラ・おねだり体質疑惑」を元県西播磨県民局長(7日に死去)が告発した問題で、県議会の調査特別委員会(百条委員会)は19日、元局長が残した音声データを調査資料に採用するか協議する。辞職を求める声も相次ぐが斎藤氏は続投を重ねて表明している。問題の背景について、同県出身で県政に詳しい政治ジャーナリスト、安積明子氏が解説する。
音声データは斎藤氏が同県上郡町での会合に参加した際、特産ワインをねだるような内容が録音されている。
元局長は3月、知事の職員へのパワハラや、視察企業からのコーヒーメーカー受け取りなど「疑惑7項目」を挙げた告発文書を作成した。
斎藤氏は記者会見で「噓八百」「公務員として失格」と非難。内部調査で元局長を停職3カ月とした。元局長は県側にパソコンも押収された。
「辞任せざるを得ない局面に」
これに対し調査の中立性を疑う声が噴出し、百条委が設置された。元局長は19日に証人として出席予定だったが、7日に死亡、自殺とみられる。
斎藤氏は、5期20年を務めた井戸敏三前知事の退任に伴い行われた21年7月の知事選で当選した。県議会最大会派の自民党県議団は当初、元副知事を推す方針だったが、党本部がこれを覆し、日本維新の会と相乗りで斎藤氏を推薦。一部県議は元副知事を推す保守分裂選挙となった。
安積氏は「分裂選挙の結果、県庁内部でも斎藤氏を支持する側、前知事に近い勢力など分裂していたのではないか」と話す。
斎藤氏は兵庫県出身で、東大経済学部卒業後の2002年に総務省に入省。出向先の大阪府で財政課長を務めた。
「年齢が若く大組織を率いた経験もない。県庁内の勢力が割れるなかで、一部の人たちに祭り上げられるような空気が、疑惑が指摘される遠因となったのではないか」と安積氏は推測する。
知事の説明責任や進退については、維新前代表の松井一郎前大阪府知事や、現共同代表の吉村洋文大阪府知事からも厳しい声が出ている。
安積氏は「斎藤氏自身が百条委で事実を話したうえで、辞任せざるを得ない局面に来ているのではないか」との見方を示した。