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ニュース裏表 田中秀臣 「昔の顔」から出る「昔の政策」立憲民主党代表選 推薦人のハードルで候補は実力者だけ 特徴の「緊縮政策」に国民の支持集まらず

zakzak by夕刊フジ 2024年9月3日 11時0分

皆さんはご存じだろうか。自民党総裁選が話題のなか、立憲民主党も代表選(23日投開票)を控えていることを―。こんな問いを提示したくなるほど、野党第1党の立憲民主党の代表選は注目度が低い。むしろ注目度が低いことが話題になるほどである。

代表選が盛り上がらない最大の理由は、立候補に必要な推薦人の数が多いことだ。自民党総裁選と同じ国会議員20人が必要だが、立憲民主党の国会議員は自民党の3分の1ぐらいだ。つまり自民党でいえば60人の推薦人を集めることに等しくなる。これは極めて高いハードルだ。泉健太代表でさえ推薦人集めに苦慮しているほどだ。

この推薦人のハードルによって、結局は党内の一部の実力者だけが候補になってしまう。実際、すでに立候補を表明したのは枝野幸男前代表と野田佳彦元首相だ。これでは新しい政治の芽が出ないだろう。党則を改正して、例えば国会議員の絶対数ではなく、一定の比率(議員の5%など)に推薦人数を定めるべきだった。ただしこれは自民党にもいえることではある。

候補者が「昔の顔」ばかりになると弊害もある。「昔の政策」しか出てこないからだ。特に経済政策では、その弊害は顕著だ。泉、枝野、野田各氏の特徴を一言でいえば「緊縮政策」である。

もっとも彼らは自分たちの政策が緊縮だとは思っていないだろう。例えば「再分配政策」を強化することは三者の共通項になるだろう。典型的には、枝野氏の政策提言をみれば分かりやすい。中間層までを対象とし、5%分の消費税減税に相当する「給付付き税額控除制度」を設けるという。一種のベーシックインカム的な政策だ。また、公共サービスを充実するために、そこで働く人たちの賃金向上も目指すという。

問題はこれらの財源だ。枝野氏は最近の発言で「財政に責任を持つ」「ポピュリズムと闘う」と述べている。これらはいずれも積極的な財政拡大政策を採用しないということだ。おそらく泉氏、野田氏の認識も大差ないだろう。経済を優先して、自然税収の増加などで財政を豊かにして、必要な政策を行うという路線とは違うと述べているわけである。

日本経済はここ数年、財政が拡大し、また税収増も実現している。そのため総需要不足にもかかわらず、基礎的財政収支(プライマリーバランス)まで黒字になる可能性がある。つまり財政規律が必要な状況ではなく、むしろ景気対策のためには財政赤字を増やすべきタイミングだ。立憲民主党に与党を上回る国民の支持が集まっていない理由は、この経済政策のダメさにある。 (上武大学教授・田中秀臣)

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