北京市内で中国当局によりスパイ容疑で拘束されているアステラス製薬の日本人男性社員の初公判が11月下旬、北京市第2中級人民法院(地裁)で開かれたことが9日、分かった。日本政府関係者が明らかにした。審理は非公開で行われたという。日本政府は外交ルートで司法プロセスの透明性を確保するよう求めている。
男性は50代のベテラン駐在員で、昨年3月の帰国直前に拘束された。同10月に正式に逮捕され、今年8月に検察当局に起訴された。
金杉憲治駐中国大使らは初公判後の今月5日、男性との領事面会を行ったが、中国当局は具体的な容疑事実などを明らかにしていない。
日本外務省によると、2014年以降、男性を含めて17人の邦人が拘束され、現時点で5人が中国国内にとどめられている。
石破茂首相は11月中旬、中国の習近平国家主席との初会談で、男性を含む中国で拘束された邦人の早期釈放を要求した。中国は日本人への短期ビザの免除措置を再開したが、邦人の拘束長期化が両国間の人的交流に悪影響を与えるのは必至だ。
中国事情に詳しい評論家の石平氏は「ポイントは審理が非公開だったことだ。中国の司法は中国共産党がコントロールしており、容疑の有無にかかわらず、誰もが有罪にされる恐れがある。石破首相が習氏に接近した意味があったのか疑問だ。中国では反日感情が高まっており、たとえビザが免除になっても、こういう状況下では行かない方がいいと、私は警告したい」と語った。