神奈川県横浜市青葉区はテレビドラマなどにもよく登場する人気の住宅地です。その住宅地を抱える東急田園都市線「市が尾駅」前のビル内に、ソフトウエア事業と国際協力事業を行う「アイツーアイ・コミュニケーション」の事務所があります。
同社代表の原口良胤(よしつぐ)さん(59)は、この青葉区で生まれ、小中高も同区内の桐蔭学園に通いました。
原口さんは大手IT会社をへて2006年に起業し、10年に市が尾駅のビル内に事務所を移転しました。ビルは駅前の好立地で、その低層部にはアルファード商店会があり、ビル上層階は多くの住民が暮らすマンションになっています。
かつてこのビルは商店会と居住者が融合してにぎわっていたそうです。しかし時代が進み、活気が失われたと原口さんは語ります。
原口さんは3年前に商店会の会計の仕事を引き継ぎました。集金でテナントを回ると、聞こえてきたのは「せっかく駅前という立地なのに集客が厳しい」という声でした。
「どうして自分が何とかしようと思ったのかよくわからないのですが…」と原口さんは笑いながら続けます。
「何か問題が落ちていると、つい拾って解きたくなる性分だからでしょうか。幸い、会社の仕事も落ち着いてきたところで、子供も巣立ちました。そして、いつの間にか自分もミドルシニア世代に入り、地元のために何かやろうかなと考えていたところでした」
商店会に活気を取り戻すべく、昨年、「商店会復活祭」を企画・実施したそうです。そこである程度の手応えを感じた原口さんは今年9月1日にフリースペース「baobab(バオバブ)」をアルファード商店会内(横浜市青葉区市ケ尾町1154の2市ヶ尾プラーザビル1階)にオープンしました=写真。
「バオバブの木の下のように、誰でも気軽に集まり、交流できる場所を作りたいと考えました」
baobabでは早速、薬膳教室や映画好きの交流会などが開催されました。少しずつ新しい交流の輪が生まれつつあるようです。今後は、シニア男性が立ち寄りやすい企画も考えたいと原口さんは話します。
「かつてこの街は、衣食住以外の文化的なことなども充実してにぎわっていました。しかし、私がいつも立ち寄っていた商店会の書店はなくなってしまいました。そんな40年が経過した今、都心で働いていたビジネスマンの方々は引退でベッドタウンに戻りつつあります。かつてのようなにぎわいを完全に取り戻すことは難しいかもしれませんが、少しでも文化的活動が楽しめるような場を作りたいと考えています」
同スペースの利用料金は1時間2000円。個人や団体を問わず、会議やワークショップなどに利用可能です(https://www.i2icom.jp/baobab、要事前予約)。
baobabの開設を機に、原口さんはこの地にシニア男性の居場所もつくろうとしているようです。
「この街をベッドタウンからリビングタウンにしていきたいですね」
藤木俊明 副業評論家。自分のペースで働き、適正な報酬と社会とのつながりを得ることで心身の健康を目指す「複業」を推奨。著書に『複業のはじめ方』(同文舘出版)など。