もう1回、スイス・ジュネーブで開催された「国連女性差別撤廃委員会」で感じたことをお伝えしたい。「対面で伝える重要性」だ。
35秒しか与えられなかったスピーチ時間を補うために、私たちは事前に「日本国天皇の皇位継承について」という英語のパンフレットを準備した。それをスピーチの2日後に行われた昼食報告会の前に、われわれ「皇統を守る国民連合の会」理事の女性陣(=筆者と、ジャーナリストの佐波優子氏、音楽家のsaya氏、通訳の安達祐子氏)で、委員会の各委員に配布しながら言葉を交わした。その際に、レバノンの委員から「(勧告したとしても)推奨しているだけなので、聞くか聞かないかは締約国の自由だ」と言われたことは連載初回でお伝えした通りだ。
最終日の日本政府代表団に対する審査会において、皇室典範に言及したキューバの委員はこう前置きをした。
「天皇に関して、宗教的または文化的な側面があることは理解している」
ここに「宗教的」という言葉が入ったのは、われわれの意思が一定程度は伝わった証しであったと考えている。
というのも、ジュネーブ行きの前に外務省を訪問した際、代表団のメンバーから「政府側からは宗教の話はしない」という旨を聞いていた。なるほど、政教分離の観点から、政府はそのような面は口に出せないのだと理解した。
皇統を守る国民連合の会が、スピーチおよびパンフレットでアピールしたのは、天皇の祭祀(さいし)王としての存在だったので、今回は良い意味での官民連携ができたように思う。
レバノンの委員の口からは、「宗教的」という言葉に加えて、「しかしながら、他の王室がある国との平等の原則に基づいて皇室典範の改正を検討するように求める」との言葉があった。「改正を求める」ではなく、「改正の検討を求める」という、かなり遠慮がちな表現であったことにも、当該委員の「思い」を垣間見た気がした。
総じて、直接思いを伝えれば、すべてではなくとも、それを受け止めてくれる委員もいるのだと実感できたことは今回の収穫であった。左派はそれを長く組織的に行ってきているわけで、そのような点は学ばなければならないだろう。
蛇足ながら、われわれの訴えはともかく、女性3人の和服姿は大人気で、その存在を強く印象付けられたことを実感した。日本文化の魅力と威力に助けられ守られたと感じたことも付記しておきたい。
■葛城奈海(かつらぎ・なみ) 防人と歩む会会長、皇統を守る国民連合の会会長、ジャーナリスト、俳優。1970年、東京都生まれ。東京大農学部卒。自然環境問題・安全保障問題に取り組む。予備役ブルーリボンの会幹事長。著書・共著に『国防女子が行く』(ビジネス社)、『大東亜戦争 失われた真実』(ハート出版)、『戦うことは「悪」ですか』(扶桑社)、『日本を守るため、明日から戦えますか?』(ビジネス社)。