Infoseek 楽天

ノマドの窓~渡る世間はネタばかり~ 「あなたの座右の銘は何ですか?」 改めて考えるきっかけとしてお勧め、仲野徹先生の〝一家に一冊本〟

zakzak by夕刊フジ 2024年8月14日 11時0分

「あなたの座右の銘は何ですか?」

生涯に何度か必ず聞かれる質問です。

「右が0・3。左が0・1です」

「それは左右の目(さゆうのめ)や!」という定番ギャグがありますが、そんなことをかましておいて。

僕は大学を卒業するときに、どこの会社にも就職しないノマド(フリーランス)を選んだ時点で心の中に<転石苔むさず>という言葉がいつもありました。

西洋のことわざ<A rolling stone gathers no moss>の邦訳ですが、これには2つの解釈があって、メジャーなのは「絶えず動いていると、苔がつかない(いつも新鮮だ)」ですね。確かに、フリーランスとしての日々は楽チンで楽しかった。

でも、もうひとつ正反対の意味で「転々と居場所や仕事を変えていると、成功できない」というのもありまして…。

実際に四十数年間、ノマドとして過ごしてきた僕が実感するのは後者です。とても自由でお気楽な日々でしたが、ここに来て、覚悟していたとはいえ、きつい毎日です。老後の資金がありません。

さて、そういう現実を乗り切るのに必要なのはただ一つ=希望です。明日は何とかなるんじゃないか、何とかなるはず―という前向きな思い。それが〝希望〟なんですが、よくよく見たらこの熟語「希な(まれな)望み」ではないですか!

そうなんです、希望というのはほとんど叶わないんです。

だけど、そこは何とかなるんじゃないか、と思うしかない。

そこで<転石苔むさず>を捨てた僕が心に留めている座右の銘がこれです。

<死は、人生の終末ではない、生涯の完成である。希望は強い勇気であり、新たな意志である。たとえ明日、世界が滅びようとも、明日、リンゴの木を植えよう>

これはマルチン・ルターの言葉と言われています。

僕は大好きですね、これ。「死ぬことは人生の終わりとちゃうねん。生涯の完成やねん」。

そして、「明日、世の中がなくなるとしても、僕はリンゴの木でも植えとくわ。じたばたしてもしゃあないし」。そんな感じ。

さて、皆さんの〝座右の銘〟は何でしょうか?

改めて、それを考えるきっかけとして、お勧めしたい本があります。

『仲野教授の この座右の銘が効きまっせ!』(ミシマ社刊)

仲野徹さんは、もう何年も前から毎月1回「駄談会」というトークイベントを僕と一緒にやってる元大阪大学教授です。

今回のコラム、本そのものの紹介にはなっていませんが、この本に触発されて書いたということで、ぜひ御一読ください。仲野先生による自分ツッコミ文体が心地良いです。 (火曜日掲載)

■東野ひろあき(ひがしの・ひろあき) 1959年大阪生まれ、東京在住。テレビ・ラジオの企画・構成(山寺宏一&野沢雅子のFM大阪「ニュー・ノーマル・ライフ」など)、舞台脚本(「12人のおかしな大阪人」など)や演出(松平健とコロッケ「エンタメ魂」など)、ライブ企画&プロデュース(キムラ緑子と大谷亮介の「ドリー&タニーライブ」など)、コメディ研究(著書『モンティ・パイソン関西風味』など)、他幅広く活動。猫とボブ・ディランをこよなく愛するノマド。

この記事の関連ニュース