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マネー秘宝館 「サラリーマン会議顔」にご用心 良きコミュニケーションの第一歩は「笑顔改善」 ほれぼれする立川志の輔さんの姿

zakzak by夕刊フジ 2025年1月22日 15時30分

「志の輔らくご」in PARCO劇場(東京・渋谷)に行ってきました。このパルコ公演、1カ月に渡って立川志の輔さんが1人で演じます。20年以上続いている公演ですが人気が人気を呼び、いまやチケットは簡単に入手できません。

公演の冒頭、師匠が「新年をお笑いで迎える国は日本くらいではないでしょうか?」と話されていました。そうかもしれません。ヨーロッパなどでは音楽のニューイヤーコンサートが似合います。

私は志の輔らくごを聞き始めて長いのですが、師匠の「時代を読み、それに合わせる」姿にはほれぼれします。根っこにあるおもしろさや様式は変えずして、表面の描写を現代に合わせて微妙に変化させる。今回の落語では、昔は登場しなかった「インバウンド外国人」が登場していました。

「変えてはいけないところ」はしっかり磨き続けつつ、「変えねばならないところ」は柔軟に変化させていくこと。この両者の見極めとバランス。これは芸人さんに限らず、職人でも、そしてすべてのビジネスマンにも通じる大切な要素であると思います。

私自身を振り返れば、「変えねばならないところ」を少なく見積もりすぎてここ数年、失敗したな、とそんなことを思いました。単なるお笑いに終わらず、仕事の方向性にもヒントが得られる、これが落語のすばらしさであります。

今回、一緒に連れていった面々は落語愛好者から初心者までそろって大興奮。この「幅広い客層」をすべて満足して帰路に着かせるところが志の輔さんの真骨頂です。

みんな良い顔をしています。人はおもしろい話を聞いたとき、そしておいしいものを食べたとき、本当に良い笑顔になります。まったく逆に、一番の仏頂顔になるのが「つまらない会議」に出席しているときの顔。私はこれを「サラリーマン会議顔」と呼んでいます。

ときどきビジネスセミナーの講師で呼ばれた際、「つまらない」と顔に書いてあるような参加者を見かけることがあります。こちらはその仏頂顔が気になります。何とかこの表情を柔らかく…と試みるわけですが、最後まで仏頂面は変わりません。ショックを受けて話を終えるとその人がこちらへやってきます。「先生、おもしろかったです」と打って変わった笑顔。その落差に愕然としつつ、「どうして講義中、その笑顔を見せてくれないの?」といぶかるわけです。

理由はだんだん分かってきました。特に大組織のオジさん方は退屈な会議が多すぎて、人の話を聞く「会議顔」がとんでもなく硬直してくるわけです。講師の話がつまらないわけじゃない。人の話を聞くとき、油断すると仏頂面になってしまう。

これではいけません。自らの「心からの笑顔」を取り戻しましょう。そのために必要なのは高価なスキンケア商品ではありません。笑いです。落語未経験の方、ぜひ志の輔師匠はじめおもしろい落語家さんの噺を聞いて「会議顔」の改善につとめましょう。良きコミュニケーションの第一歩は「自らの笑顔改善」から!

■田中靖浩(たなか・やすひろ) 公認会計士、作家。三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社勤務を経て独立開業。会計・経営・歴史分野の執筆・講師、経営コンサルティングなど堅めの仕事から、落語家・講談師との共演、絵本・児童書を手掛けるなど幅広くポップに活躍中。「会計の世界史」(日本経済新聞出版社)などヒット作多数。

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