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尹大統領を拘束、待つのは歴代大統領と同様の悲劇か 韓国で異常事態、高捜庁近くで男性が焼身自殺未遂か 日本に譲歩要求も

zakzak by夕刊フジ 2025年1月16日 15時30分

韓国が再び、大混乱状態に陥った。昨年12月の「非常戒厳」宣言をめぐり、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が15日、内乱を首謀した疑いで拘束された。尹氏は黙秘した。高官犯罪捜査庁(高捜庁)や警察などの合同捜査本部は16日も取り調べを続け、拘束から48時間以内の17日午前10時33分(日本時間同)までに逮捕状を請求する見通しだ。韓国では歴代大統領の多くが暗殺や逮捕といった悲惨な末路をたどっている。尹氏にも同様の運命が待ち受けるのか。尹氏は国会で弾劾訴追を受けており、憲法裁判所が罷免を認めれば、60日以内に大統領選に突入する。混迷を深める韓国が再び、日本に歴史問題などで譲歩を迫ってくる恐れもあるとして、識者は厳重警戒を呼び掛けている。

「捜査権のない機関に令状が発付され、令状審査権のない裁判所が拘束令状と家宅捜索令状を発付するのを見ながら、そして捜査機関が偽りの公文書を発付して国民を欺くこのような『違法の違法の違法』が行われ、無効な令状によって手続きを強圧的に進めるのを見て、本当に嘆かざるを得ない」

尹氏は15日、拘束後に公表した約3分間の映像メッセージで、こう国民に訴えかけた。

拘束に応じた理由については、「私はこの高捜庁の捜査を認めているわけではない。大韓民国の憲法と法体系を守護しなければならない大統領として、このように『違法で無効な手続き』に応じることは、これを認めるのではなく、『望ましくない流血の事態を防ぎたい』という一心に過ぎない」と、不満をにじませた。

尹氏には、国会議員による「非常戒厳」宣言の解除要求決議を防ぐため国会封鎖を試みた疑いや、与野党代表ら主要政治家を拘束しようとした疑いなどが持たれている。国会に兵力を投入した軍幹部らは「尹氏から直接指示された」と供述しているとされている。

しかし、尹氏は〝徹底抗戦〟の構えを見せている。

尹氏のフェイスブックには15日、自筆の手紙が投稿された。「非常戒厳」宣言を改めて正当化し、国家の危機を克服するための大統領の権限行使で「犯罪ではない」と主張した。

高捜庁の取り調べにも、黙秘で対抗した。

聯合ニュースによると、尹氏への取り調べは15日午前11時から午後9時40分ごろまで行われた。3人の検事が交代で取り調べを行ったが、尹氏は質問に一言も答えず、供述を拒否したという。

尹氏が今後、逮捕されれば現職大統領として初のケースとなる。歴代大統領では、退任後や罷免後に4人が逮捕されている。

逮捕されずとも、韓国大統領の「悲惨な末路」はときどき話題になる。

初代大統領の李承晩(イ・スンマン)氏は反政府デモの拡大を受けて辞任して米ハワイに亡命した。第5~9代の朴正熙氏(パク・チョンヒ)氏は1979年、側近に暗殺された。第16代の盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏は退任後に収賄などの疑惑を持たれ、自殺した。

韓国で大統領経験者が逮捕されたり、親族らが捜査を受けるケースが相次ぐ背景には、保守と左派が激しく対立し、政権交代のたびに前政権の不正を徹底的に追及する「政治報復」が一因とされ、混乱が繰り返されてきた。

今回もすでに〝異常事態〟が起きている。

日本に譲歩要求「歴史問題」蒸し返しか

韓国メディアは、尹氏を取り調べた高捜庁が入るソウル郊外の政府庁舎付近で15日夜、やけどを負った男性が見つかって重傷を負ったと伝えた。消防当局によると焼身自殺を図ったとみられている。高捜庁の近くでは、尹氏を支持する保守系団体が抗議集会を開いており、当局が関連を調べている。

なぜ、このような事態が起きているのか。

麗澤大学の西岡力特任教授は「韓国では今、最大野党『共に民主党』が勝利した2020年と24年の総選挙で『不正が行われた』という陰謀論がユーチューブを通じて広がり、猛威を振るっている。尹氏は12月の『非常戒厳』宣言の際、中央選挙管理委員会に軍を展開させており、世論調査では保守層の半数以上が戒厳を支持している。尹氏逮捕に反対する人々が正月から大統領公邸前でデモを続けており、その人たちの多くが『不正選挙が行われた』と信じている。尹氏は今後、逮捕されたとしても英雄扱いが続くだろう」と話す。

逮捕の危機に立たされている尹氏は国会の弾劾訴追を受けており、憲法裁判所で大統領罷免の是非を判断する審判が始まっている。16日午後も第2回弁論が開かれる予定だが、拘束された尹氏の出廷は困難とみられている。

憲法裁で罷免が認められれば60日以内に次期大統領選が行われるが、尹氏の罷免は認められるのか。日韓関係にはどのような影響があるのか。

西岡氏は「今回の『非常戒厳』宣言では、憲法上統制が認められない国会の政治活動を禁止するなど憲法秩序を否定しており、憲法裁が罷免を認める可能性は高いのではないか。韓国社会の混乱が続くなか、『尹氏の後継者を助ける』『保守系の与党を助ける』というような名目で韓国側が歴史問題で日本に譲歩を求めてくるかもしれないが、『日韓の歴史問題は終わっている』という認識で日本政府内を固めて、新たに謝罪する談話などを出さないようにしないといけない」と語った。

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