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ニュース裏表 平井文夫 「石破人事」は極めて危険な賭け 安倍氏を「国賊」発言、村上誠一郎氏の総務相起用はさすがに…「味方」を斬って「敵」を喜ばせる?

zakzak by夕刊フジ 2024年10月3日 6時30分

石破茂首相は9日に衆院を解散し、27日に投開票することを明らかにしているので、永田町はすでに選挙モードに入っている。だが、組閣や党役員人事を見る限り、「挙党体制」とは呼べない。

石破氏は総裁選を戦った8人について、「ふさわしい役職をお願いするのは当然」と述べ、高市早苗氏には総務会長を、また小林鷹之氏には広報本部長を提示したが、いずれも断られた。

2人とも「ポストは仲間に譲ってほしい」と答えたそうだが、高市氏の場合、2012年の総裁選で石破氏が安倍晋三元首相に敗れたときに幹事長に指名されたのに比べると、明らかに格下のポストだ。政策通の小林氏には閣僚ポストを与えるべきだった。

他にも、かなり首をかしげる人事があるが、まあ「論功行賞」はやむを得ない。この世界、「いくさに勝つのがすべて」だからだ。

だが、村上誠一郎元行革担当相の総務相起用は、さすがに厳しいと思う。村上氏は、参院選の街頭演説中に凶弾に倒れた安倍氏を「国賊」と呼び、1年間の役職停止処分を受けた人だ。

今回総裁選の決選投票では、党議員のほぼ半数が高市氏を総裁に推した。彼らの多くは安倍氏の首相としての功績を評価しているだろう。

その安倍氏を「国賊」と呼んだ人を入閣させるというのは、「党の半数を敵に回した」ことになる。国会議員だけでなく、自民党支持層の有権者の中にも「石破許すまじ」の声は相当上がっている。

石破氏は総裁選でも、「アベノミクスからの軌道修正を図らねばならない」と述べたり、政治資金規正法違反で処分を受けた安倍派の議員を選挙で公認しないことを示唆するなど「反アベ」的な言動が目立っていた。

これは自民党保守層からは反発を受けるが、実は「比較的リベラルな保守系無党派」にはウケがいい話だ。石破氏の作戦は「自民党保守層を多少怒らせてもいいから、保守系無党派から票が来れば総選挙は勝てる」ということなのだろう。

つまり自民党支持層という「味方」ではなく、無党派層という「敵」にもなる人たちを味方にしようということだ。

ただ、無党派というのはもともと自民党の支持者ではないので、一度は味方になっても、またすぐに離れてしまったり、あるいは敵方に行ってしまうこともある。一方で、一度離れた自民党保守層はなかなか帰ってこない。

つまり味方を斬って、敵を喜ばせるという石破氏の作戦は「極めて危険な賭け」なのだ。

政治は数がすべてだ。自民党内は「不協和音」を懐にしまって、「とりあえずいくさに勝つ」ということで一丸になっている。これが自民党のしぶといところだ。

石破氏が総選挙に勝てば、党内の分断は残っても反対勢力の力は弱まる。だが、もし負けたらどうなるのか。石破氏を降ろして、もう一回総裁選をやるのだろうか。 (フジテレビ客員解説委員 平井文夫)

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