最近の選挙結果は想定外のことが多い。先々週の兵庫県知事選(17日投開票)では、パワハラ疑惑で失職した前知事が圧勝した。さらに先週は名古屋市長選(24日投開票)で、河村たかし前市長の後継者が主要政党の推薦を受けた国民民主党出身の候補をこれも大差で破った。
ただ、「想定外」というのは私が既成メディア出身で、主に既成政党の政治家を取材しているからであって、一般の有権者にとっては当然の結果なのかもしれない。
国政では、自公与党が衆院で過半数を失ったため、野党の国民民主党の「減税策」を受け入れないと予算が通らないという状況になっている。世論調査では、国民民主党の政党支持率が「爆上がり」している。
だが、その国民民主党出身の大塚耕平氏が名古屋であっさり負けた理由は、相手の広沢一郎氏が河村氏が代表を務める地域政党「減税日本」という政党の推薦を受けていた、すなわち「減税の本家本元」の人だったからだろう。
つまり有権者が支持しているのは国民民主党ではなく「減税」ということになる。
毎日新聞の世論調査(23、24日実施)によると、内閣支持率は前月から15ポイントと大幅下落して31%となり、不支持の理由として「石破茂首相の指導力に期待できないから」が47%と最も多い。
ところが、「石破首相が辞任する必要はない」と答えた人は43%で、「辞任すべき」の24%を大きく上回っている。これはおそらく、「石破は嫌いだが首相は辞めるな。国民民主党の言うことを聞いて減税しろ」という「民意」なのだろう。
毎日の調査では、自民党の政党支持率は前月から8ポイントも下がって21%になってしまった。ということは、減税案を丸飲みして実施しても、自民党と内閣の支持率は下がり、国民民主党の支持率だけが上がり続けるということになるだろう。
そして、国民民主党は早い時期に「消費税も5%に下げろ」と言ってくるに違いない。有権者が支持しているのは国民民主党ではなく「減税」だからだ。
たとえそれが民意だとしても、自民党はこの「野党の言いなりになる少数与党」という状態を一体いつまで続けるのだろうか。選挙で多くの仲間を失い、党内は大荒れで、再生はできるのか。
いっそのこと、石破首相には辞めてもらって新しい総裁を選び、解散総選挙をやって、「私たちか、国民民主党か、どちらに政権を任せるのか、どうか有権者の皆さん決めてください」と問うた方がいいのではないか。
そして、もし負けたら野に下り、一から出直して、捲土(けんど)重来を期する方が党の再生としては正しいやり方だと思うのだ。 (フジテレビ客員解説委員・平井文夫)