「SMBC日本シリーズ2024」第6戦(3日、横浜スタジアム)はDeNAがソフトバンクに11―2で大勝。対戦成績4勝2敗とし、1998年以来26年ぶり3度目の日本一に輝いた。貯金2のセ・リーグ3位から勝ち上がり、シーズン92勝、貯金42のパ・リーグ王者との最大格差対決を撃破。今年4月に5年ぶりに復帰した筒香嘉智外野手(32)が〝変心〟し、「史上最大の下克上」を成し遂げた。 (山戸英州)
横浜に帰還した筒香は夏場に左肋骨疲労骨折で離脱。1カ月半後の8月17日に再昇格後は主に代打生活が続き、57試合の出場でスタメンはわずか36試合にとどまったものの貢献度は絶大だった。
2016年には本塁打、打点の二冠を獲得。不動の4番に座った一方で、存在感が大きいあまり後輩にとっては近づきがたかった。当時を知るチーム関係者は「本人も自分の技術を追求するタイプで、細かく後輩をフォローするような余裕ははなかった」と証言する。
19年オフに米大リーグのレイズへ移籍。しかし、直後のコロナ禍もあって調子に乗れず、次第に速球への対応がままならないことから3Aや2A、独立リーグを転々とし不遇の日々を送ることになった。
今春巨人との争奪戦の末、古巣復帰が決まったが、当時の印象から「最初はみんな距離を置いて様子見していた」と明かす。だが苦労を重ね、ベテランの域に入った筒香は〝変心〟。チームメートとコミュニケーションを取るようになり、以前とは変わった姿が認められるようになると徐々に溶け込んでいったという。その成果は最高の舞台である日本シリーズの場でも発揮された。
本拠地でソフトバンクに初戦から2連敗。敵地に乗り込んでの3戦目から立て直すのは容易ではなかったが、チームアナリストから提供される大量の敵陣のデータを筒香が牧秀悟内野手(26)ら主力選手と自主的に集まり分析しあった。
DeNAは12球団で唯一先乗りスコアラー制度を廃止し、アナリストの主導でデータをフル活用。一方で首脳陣は、データを有効利用しきることができずに苦戦していた。
そこで選手たちは「自分たちでも、ミーティングを開くことが格段に増えた」(球団関係者)。2連敗で重い空気に包まれた後も、牧、桑原将志外野手(31)らが自主的に選手を集めて一致団結した。
筒香は2戦目からスタメン出場すると、打席で感じた相手投手のボールの軌道や対処法をナインに伝授。日本一を決める試合でも先制弾を含む2安打4打点で勢いをつけ、悲願の日本一へと導いた。
「うちは連勝、連敗の差が激しかった。すべてセルフでやっていたので結果の濃淡があったけど、筒香が後輩を気遣いながらサポートするように動いてくれた」と前出の関係者は感謝。筒香は「来年以降の自信にもつながると思う」と胸を張った。最高の栄冠は決して棚からぼたもちで得たものではなかった。