日産自動車が、世界で9000人の人員削減を柱とするリストラ策を発表した。重要市場の米国ではハイブリッド車(HV)の人気が高いが、日産はHVの品ぞろえがなく、「電気自動車(EV)シフト」が裏目に出た形だ。カルロス・ゴーン元会長の拡大路線から転換を図った日産だが、今度は縮小路線が止まらなくなっている。
日産の2024年9月中間連結決算は、純利益が前年同期比93・5%減だった。
米国市場ではEV人気が一巡し、燃費が良く充電の手間がかからないHVが好調だ。トヨタ自動車やホンダはHVが業績を下支えしているが、日産はHVを展開しておらず、収益機会を逃した。内田誠社長は「HVがここまで上がってくるとは読んでいなかった」と話す。
一方、中国市場はEVが主流だが、こちらは比亜迪(BYD)など低価格を武器とする現地メーカーが存在感を高め、「価格競争が激しさを増している」(内田氏)。
トヨタ、ホンダと並ぶ国内自動車メーカー「トップ3」が定位置だった日産だが、7日時点の株式時価総額は1兆5227億円で、トヨタ(43兆6257億円)、ホンダ(7兆4976億円)、スズキ(2兆9704億円)、SUBARU(1兆8223億円)に続く業界5位だ。
日産はゴーン体制で販売台数世界一を目指したが、失脚後の19年に世界14拠点で計1万2500人の人員を削減する計画を発表した。翌20年にはコロナ禍もあって世界の生産能力を20%縮小する構造改革を公表するなど、度重なる人員削減や生産体制の見直しを強いられている。
今回の9000人削減は全従業員の約7%に当たるが、国内を含むかどうかは明らかにしていない。
コストカッターとして名をはせたゴーン元会長と別の道を進んでいるはずの現経営陣だが、業績回復の手法は同じリストラというのは皮肉だ。