かつて「小室等の新音楽夜話」という番組があった。2014年の春から4年間、TOKYO MXで放送された30分番組だ。日本のフォーク界を率いてきたシンガー・ソングライターの小室等がパーソナリティーを務め、やはり日本の音楽界を名曲と名演で彩って来たミュージシャンたちと、ここでしか聞けないトークとライブを繰り広げた上質の番組だった。
昭和の頃は、ベストテン番組や「夜のヒットスタジオ」などの人気音楽番組があって、歌謡曲と同じように、フォークやロックのミュージシャンの生演奏を楽しめたものだ。それが平成になると、そういう音楽番組は徐々に減っていき、数えるほどになり、年に数回の長時間特番で〝音楽祭り〟が開催されるぐらいになってしまった。
ちょうどその移行期に、厳選されたゲストミュージシャンから、小室等が貴重なエピソードを聞き出す対談パートと、毎回2曲ほどのライブパート(ゲストのソロだったり、小室等とのデュオコラボだったりした)を最高の音質で届けたのが「小室等の新音楽夜話」だったのだ。
令和も6年が終わろうとしている今、このコラムを読んでいただいている「昭和フォークにかぶれた世代」の皆さんなら「みんなド真ん中!」という人たちが毎回登場していたこの番組のゲストを挙げると、六文銭、坂崎幸之助、山崎ハコ、友部正人、中川五郎、白鳥英美子、鈴木康博、清水国明、伊藤多喜雄、佐野史郎などである。
僕は、この番組がお気に入りで、そのトークとライブをすべて見たが「ええっ、そうだったのか! そこまで言っていいの?」というやりとりに興奮したり、一流レベルのライブに魅せられた。
例えば、佐野史郎さんが「中津川フォークジャンボリーの、あの吉田拓郎の『人間なんて』で大合唱の時、かぶりつきでいたんですよ」と興奮気味に話す様子に僕も前のめりになったり、山崎ハコさんが「原田芳雄さんが、ハコの歌には〝縁(えにし)〟を感じるんだよ。だから〝縁歌〟だ」と言われたというエピソードに感激したり。
書き始めるとキリがないけれど、そんなお宝アーカイブ映像をまとめた新春特番があるのでぜひごらんいただきたい。
年が明けて1月2日午前11時からTOKYO MXテレビでOAされる「小室等のシン音楽夜話~歌が空から降れば~」は必見です。
そして、ここに登場するミュージシャンたちが一堂に会する「小室等de音楽祭」(2月27、28日 東京・一ツ橋ホール)が開催されるので、生で体感できるこの機会をお見逃しなく!
■東野ひろあき(ひがしの・ひろあき) 1959年大阪生まれ、東京在住。テレビ・ラジオの企画・構成(FM大阪「森高千里ララサンシャインレディオ」)、舞台脚本(「12人のおかしな大阪人」)やコンサート演出(松平健とコロッケ「エンタメ魂」)、ライブ企画・構成(「小室等de音楽祭」)、コメディ研究(著書『モンティ・パイソン関西風味』など)。猫とボブ・ディランをこよなく愛するノマド。