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「反高市」「反安倍」が露骨、石破茂総裁〝論功行賞〟の閣僚人事 「挙党一致」「刷新感」程遠い布陣 古い自民党を想起、党内分断を懸念

zakzak by夕刊フジ 2024年9月30日 11時28分

自民党の石破茂総裁は30日までに、閣僚・党幹部人事の骨格を固めた。総裁選で石破氏を支援した側近や、決選投票で票を上乗せした岸田文雄首相の旧岸田派、菅義偉前首相率いる無派閥系の議員が重用された。保守派が支持し、第1回投票でトップだった高市早苗経済安保相には幹事長や重要閣僚ではなく、総務会長を打診して固辞された。「論功行賞」「リベラル重用・保守外し」「安倍晋三路線からの決別」という色彩が鮮明で、「挙党一致」「刷新感」には程遠い布陣といえる。古い自民党を想起させ、深刻な党内分断を懸念する声もある。石破氏は10月1日召集の臨時国会で首相に就任後、9日にも衆院解散に踏み切り、「15日公示、27日投開票」の日程で衆院選を実施する意向だが、暗雲が垂れ込める船出となりそうだ。

15日公示、27日投開票 衆院選へ

「それぞれの能力を最大限発揮できる人事を考えたい」「最もふさわしい役職をお願いするのは当然」「『どの派閥から何人』とは考えない」

石破氏は総裁選後、裏金事件を発端にした派閥解消の流れを受け、「挙党一致」や「党刷新」を反映した人事を実行する意向を重ねて強調していた。

ところが、30日朝までに明らかになった人事を見ると、石破氏に近いリベラル系議員や、決選投票を含む総裁選で支援した面々が重用された。 決選投票で激突した高市氏は「私を支えてくれた方々の登用を」と自身はポストを固辞したが、安倍政権を支えた保守派は少なかった=別表。

例えば、外相に内定した岩屋毅元防衛相と、防衛相に決まった中谷元・元防衛相は、国防族として石破氏と親しい。総務相に起用が固まった村上誠一郎元行政改革担当相は総裁選では石破氏の推薦人を務めたが、安倍元首相の死去後、安倍氏を「国賊」と呼び、1年間の党役職停止処分を受けた人物である。

旧石破派としては、経済再生担当相に内定した赤沢亮正財務副大臣と、デジタル相に内定した平将明広報本部長代理がいる。

平氏は総裁選中のBS番組で、高市氏への支持拡大について、政策リーフレットを全国党員らに郵送したことが一要因と主張した。「高市潰し」と批判する声もあった。

ちなみに、高市氏側はリーフレット完成は総裁選出馬が不透明だった7月末で、選管通知前の今月4日時点で発送完了していたと説明している。

旧岸田派も目立つ。

決選投票当日、岸田首相は「決選投票は、高市氏以外の党員票が多い候補でいく」と旧岸田派議員らに〝指令〟を出したとされる。この論功行賞なのか、旧岸田派では、林芳正官房長官が内閣の要である同ポストを続投、小野寺五典元防衛相が政調会長に抜擢された。

同じく決選投票で票を上乗せした菅義偉前首相の周辺では、菅氏の副総裁をはじめ、法相に牧原秀樹元経産副大臣、国家公安委員長に坂井学元官房副長官、こども担当相に三原じゅん子参院議員の起用が固まった。財務相に内定した加藤勝信元官房長官も菅氏と懇意だ。

島田氏「対北外交の危険性が顕在化か」

今回の人事をどう見るか。

政治評論家の有馬晴海氏は「通常、総裁選が終われば『ノーサイド』だが、相反する人事になった。石破氏に近い人材が重用され、決選投票で石破氏を推した菅氏のお膝元である『神奈川勢』の坂井氏や三原氏らが登用されている。政権ナンバー2の官房長官には、岸田派の林氏が続投する見通しだ。よく悪くもブレない、わが道を行く姿勢が特徴だった石破氏だっただけに、『強み』がそがれた印象だ」と評する。

保守政治を象徴した「安倍・高市外し」の背景は何か。総裁選で展開された露骨な「高市潰し」が影響しているのか。

有馬氏は「高市氏が総務会長を、小林鷹之前経済安保相が党広報本部長を固辞し、〝対立〟が強調される形になった。本来、不本意でもポストは受け、閑職でも党内や閣内に足場を残し、政治力の芽を温存するのがセオリーだったが、今回は違う。保守系を中心にした『石破氏への忌避感』もさることながら、『石破政権は長く続かない』との見方から、あえて行動をともにしない判断も働いたのではないか」と分析する。

外交面、特に北朝鮮による拉致問題への強い懸念も浮上している。

福井県立大学の島田洋一名誉教授は「石破氏と、外相に固まった岩屋氏、防衛相就任が予想される中谷氏がそろって、日朝国交正常化推進議員連盟(日朝議連)に所属している。同議連は、北朝鮮に寄り添う姿勢が批判されてきた。石破氏が総裁選で主張した『東京と平壌への連絡事務所設置』の構想も相まって、日本人拉致問題を置き去りにした対北外交の危険性が顕在化しそうだ。安倍元首相は『拉致問題解決』を悲観としていた。安倍氏を『国賊』と呼んだ村上氏を総務相に起用するなど、あまりにも『反安倍』の露骨な人事だ」と指摘する。

党内分断も指摘される石破新体制だが、今後どうなるか。

あるベテラン議員は「石破氏支持者も、高市氏支持者も、熱心であればあるほど、相いれない。それほど、政治信条が違う。異例ずくめの人事だが、事実上、『倒閣運動』が始まっているともいえる。総裁選は僅差だった。高市氏の支援が受けられない以上、党内はほぼ半分で『断絶』した状態になっている。早期の総選挙に踏み切るのも、『敵の敵は味方』論で難局を回避するためではないか」と語った。

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