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ニュースの核心 米大統領選最終盤 トランプ氏優勢、数字のウラに「隠れ支持者」も ハリス氏、激戦7州で勢いに陰り 石破首相の「もしトラ」対応に大不安

zakzak by夕刊フジ 2024年11月3日 10時0分

米大統領選(5日投開票)は最終盤に突入した。民主党候補のカマラ・ハリス副大統領(60)と、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領(78)が激しく競り合い、両陣営が総力戦を展開している。勝敗のカギを握るのは、ペンシルベニアやノースカロライナなどの「激戦7州」で、ここに来て、トランプ氏の優勢が伝えられる。石破茂首相は、トランプ氏の盟友、安倍晋三元首相をネチネチと批判し続け、安倍氏を「国賊」と罵倒した村上誠一郎総務相を重用しているが、「トランプ大統領復活」に対応できるのか。日米同盟は大丈夫なのか。現在、米ニューヨークに滞在しているジャーナリストの長谷川幸洋氏が最新情勢に迫った。

米大統領選の投開票が目前に迫ってきた。ここへきて、トランプ氏に「ミニ雪崩の支持が集まるのではないか」という見方も出ている。なぜ、トランプ氏は強いのか。

トランプ氏は、ハリス陣営や民主党支持の主要マスコミから執拗(しつよう)な攻撃にさらされてきた。典型は「トランプ氏は重罪犯」という指摘だ。

トランプ氏は2021年の米議会襲撃事件への関与をはじめ、不倫相手への口止め料支払いや大統領在任中の機密文書持ち出し、集計作業中だったジョージア州への圧力という4つの問題で起訴された。

24時間報道が売り物のCNNは、裁判が開かれるたびに連日連夜、事件を取り上げ「トランプの名前が聞かれない日はない」と言ってもいいほどだった。

それでも、トランプ氏は当時の民主党候補だったジョー・バイデン大統領に対して、一貫して優勢を保っていた。

ところが、高齢のバイデン氏が7月に選挙戦から撤退し、ハリス氏が代わって候補に躍り出ると、民主党は一挙に形勢を挽回し、8月からは接戦状態が続いていた。

ハリス氏、激戦7州で勢いに陰り

均衡が崩れたのは10月に入ってからだ。

米世論調査会社、リアル・クリア・ポリティクス(RCP)によれば、勝敗の鍵を握る激戦7州で両者の差は徐々に開き始め、10月30日時点では、トランプ氏が7州のうち6州で優勢に立っている。

勝敗に金銭を賭ける賭け率でも、10月29日時点の7社平均でハリス氏の35・1%に対して、トランプ氏勝利が64・0%と大幅に上回った。

RCPは23日、トランプ氏が「激戦州で接戦を制する結果、全体ではミニ雪崩現象が起きるのではないか」という専門家の見通しを報じた。

激戦州での両者の差は0・5%から2・5%程度と誤差の範囲内だが、16年と20年の大統領選では「トランプ氏の支持が過小評価されていた」というブルッキングス研究所の報告もある。

世論調査に対して、「トランプ支持」と答えたくない「隠れトランプ」の層が数字に反映されにくいためだ。そうだとすると、実際はもっと支持が多い可能性もある。

数々のスキャンダル報道にもかかわらず、トランプ氏が支持を集める理由は何か。

石破首相「アジア版NATO」「日米地位協定の改定」で厳しい立場

米国の報道を見る限り、私は「トランプ氏を好きなわけではないが、不法移民の流入やインフレはもっと困る」という有権者が多いからだ、とみる。有権者は醜聞よりも、もっと身近で切実な問題に不安を感じているのである。

いまの米国は、候補者の資質にかまっていられないほど、国内の脅威が現実になりつつある、と言ってもいい。実際、不法移民はバイデン政権下で急増した。ハリス陣営も実態を無視できず、移民対策の強化を打ち出しているが、トランプ氏の政権批判には対抗できていない。

インフレも大きな要素だ。

米国滞在中の私は、ほとんど外食しているが、ファストフードの韓国料理でも1回4000円ほどかかる。流通大手は祝日に格安の食事セットを提供するテレビ・コマーシャルを流している。

富豪が経営する米紙ワシントン・ポストやロサンゼルス・タイムズは最近、異例にも「支持候補なし」の方針を打ち出し、ハリス陣営を支持してきた編集者が辞職する騒ぎが起きた。トランプ優勢を見極めた結果かもしれない。

もしも、トランプ氏が勝利すれば、自民党総裁選で「アジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設」や、「日米地位協定の改定」を訴えた石破首相は難しい立場に立たされる。

「そんな話をしたいなら、まず日本が憲法改正をしたらどうだ」とトランプ氏に逆襲されるのは必至だからだ。石破首相に、そんな心の準備があったとは思えない。

いよいよ、「トランプ復活」が現実味を帯びている。

■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

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