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カワノアユミの盛り場より愛を込めて 老後のタイ移住はもはや「おとぎ話」月5万円生活は非現実的 ビザ取得も入国拒否? 経済的に余裕のない人は歓迎されず

zakzak by夕刊フジ 2024年7月11日 6時30分

4月後半から訪れていたタイから一時帰国した。今回気付いたことがある。それは、タイはもはや、日本人が老後に気楽に住める国ではなくなっているということだ。

ほんの数年前まで、日本のシニア層にとってタイはまだ定年後の人気の移住先だった。しかし、それはあくまでもタイの物価が日本の3分の1といわれていた時代の話で、今回の滞在ではタイの物価高騰をかつてないほどに実感した。タイ好きが高じて10年ほど前にはバンコクのキャバクラでも働いたし、以前から老後はタイに住みたいと考えていた。しかし悲しいかな、いまでは自分が一体いつまでタイを訪れることができるのかさえ、心配し始めている。

20年前、私が初めてタイを訪れたときは「タイでは月5万円あれば生活できる」と言われていた。当時のレートは1バーツ=2.6円で、屋台のタイラーメンは15バーツだった。それが、現在は1バーツ=約4.38円で、タイラーメンは50~60バーツだ。月5万円での生活など、とっくに現実的ではない。

コロナ感染拡大前のタイバーツは3円台で、生活費のみなら月10万円ほどでの暮らしはまだ可能だった。ところが、パタヤに滞在していた今回は決してぜいたくなどはしなかったのに、生活費は月約20万円もかかった。

パタヤでこの額なら、首都のバンコクでは倍はかかるだろう。もはや、「タイ=安い」というイメージはすっかりなくなってしまい、筆者が普段暮らしている関西ともほぼ変わらないと感じた。

すでにタイに移住している日本人も暮らしを直撃されていることだろう。タイはリタイアメントビザの関係から50歳以上になってから移住する外国人が多い。日本人もその例外ではなく、皆、それなりの資産を作って移住した人が多い。ただ、数年前までは「資産3000万円あれば早期リタイアしてタイで暮らせる」などといわれてきたが、それももう「おとぎ話」ではないか。

私がタイに通い始めた頃は、観光ビザで入国してはカンボジアやラオスなどの近隣国に一時出国して、再入国を繰り返す、いわゆる「ビザラン」をしながら現地で暮らす日本人も多かった。だが、現在ではビザランどころか、学生ビザを取得していても入国拒否されたり、強制帰国させられるケースも少なくない。タイ側としても、経済的に余裕のない人間は歓迎できないのだろう。

もちろん、私もその例外ではない。アジアには他にも、カンボジアやフィリピンなど安く暮らせる国はある。だが、タイが好きな人間にとっては厳しい将来が待っていそうだ…。今回の滞在でそれをひしひしと感じた。

■カワノアユミ 20代を歌舞伎町と海外夜遊びで過ごした元底辺キャバ嬢。現在は国内外の夜の街でニッチなネタから盛り場の変遷までを幅広く取材。著書に、アジア5カ国の日本人キャバクラで9カ月間潜入就職した『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)。X(旧Twitter):https://x.com/ayumikawano/

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