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石破総裁〝時限爆弾〟内閣発足へ 安倍元首相を「国賊」村上氏抜擢、麻生氏は記念撮影拒否 保守派に不満、株価は大幅下落

zakzak by夕刊フジ 2024年10月1日 11時46分

第102代首相に選出

自民党の石破茂総裁は1日午後、衆院本会議の首相指名選挙で第102代首相に選出され、皇居での首相任命式と閣僚認証式を経て石破内閣を発足させる。石破氏は9日に衆院を解散し、「15日公示、27日投開票」の日程で衆院選を実施する意向だが、党内には〝火種〟が山積している。「挙党一致」を掲げた閣僚・党役員人事では、総裁選で自身を支えたリベラル系が重用されているうえ、安倍晋三元首相を「国賊」と呼んだ村上誠一郎元行革担当相を総務相に抜擢(ばってき)するなど、保守派を中心に不満が噴出している。新政権の経済政策に失望したのか、9月30日の東京株式市場で日経平均株価は大幅下落した。気になる麻生太郎最高顧問の動き。石破丸は「時限爆弾」を抱えた船出となりそうだ。

「われわれに対する宣戦布告だ」

旧安倍派の若手議員は、村上氏が総務相に起用される方針となったことを受け、こう激怒した。

村上氏は2022年9月、参院選の街頭演説中に凶弾に倒れた安倍氏の国葬(国葬儀)への反対と欠席を表明し、「(安倍氏は)財政、金融、外交をボロボロにし、官僚機構まで壊した。国賊だ」と言及したと報じられた。

同年10月の自民党党紀委員会では、「離党勧告」や「除名」といった厳しい処分を求める意見が大半だったが、党員としての品位をけがす行為に当たるとして「1年間の党役職停止処分」を決めた。

当時の衛藤晟一党紀委員長は記者団に「これだけ功績があり、命がけで国のために取り組んできた総裁(安倍氏)に対する極めて非礼な発言で、許しがたい」と語った。

その村上氏の起用が、旧安倍派や保守派を刺激することは明らかだ。

これ以外にも〝火種〟は存在している。

今回の人事では、石破氏の側近のほか、総裁選の決選投票で票を上乗せした岸田文雄首相の旧岸田派、菅義偉前首相率いる無党派系議員の重用が目立った。3人の名前をもじって、「まるで岸破義偉政権だ」(閣僚経験者)との皮肉も漏れるほどで、石破氏の掲げる「挙党一致」には程遠い状況といえる。

麻生最高顧問「一体何をしてほしいのか」

総裁選で高市早苗経済安保相を推し、党副総裁から最高顧問となった麻生太郎氏の処遇には疑問の声が上がっている。麻生氏の後任として副総裁となったのは関係が良好とはいえない菅氏で、麻生氏への「当て付け」との見方が出ていた。

麻生氏は「(俺に)一体何をしてほしいのか」と渋りながらも就任を承諾したというが、新執行部が発足した際の記念撮影には加わらなかった。麻生氏の不満がうかがえ、早くも党内の溝が露呈している。

岸田政権で主流派だったが、石破体制で非主流派となった茂木敏充前幹事長の周辺からも不満が漏れる。

旧茂木派からは加藤勝信元官房長官と福岡資麿参院政審会長が入閣見込みだが、茂木氏周辺は「加藤氏は『菅枠』、福岡氏は『参院枠』で、うちは事実上ゼロだ」と語った。

総裁選の第1回投票でトップだった高市氏と、保守の若手として存在感を示した小林鷹之前経済安保相は、それぞれ総務会長、広報本部長の打診を固辞し、距離を置く姿勢を取った。

高市氏側近は「(高市氏は)国家経営を担う器量を身に付け、仲間づくりを進める時間に充てる」と語り、すでに「ポスト石破」を見据えている。

現在の自民党の状況をどうみるか。

政治評論家の伊藤達美氏は「新総裁誕生から間もないなか、これほど批判されるのも珍しい。村上氏の起用は、安倍氏の支持者の批判だけでなく、野党の攻撃材料にされかねない。麻生氏を最高顧問につけながら、菅氏を副総裁に起用する人事もしこりを残すのではないか。党内には相当な反発があると予想される」と解説する。

有元隆志氏「党内対立は激化」

自民党外にも懸念材料がある。

石破氏は総裁選で、解散の時期について、「国民に判断いただく材料を提供するのは政府の責任であり、新しい総理の責任だ。本会議というのは基本、一方通行でなかなかやり取りがない。本当のやりとりは予算委員会と思っている」「『すぐ解散します』という言い方は、私はしません」(日本記者クラブ主催の討論会)などと語っていた。

ところが、石破氏は9月30日の記者会見で、「新政権はできる限り早期に国民の審判を受けることが重要だ」といい、衆院選を「10月27日投開票」の日程で実施すると表明した。

同日開かれた自民党と立憲民主党の国対委員長会談では、立民側から「言っていることと、やっていることが違うじゃないか」と怒号が飛んだという。

マーケットも石破政権に拒否反応を示した。

新執行部が発足した同日、日経平均株価(225種)は急落し、下げ幅が一時2000円を超えた。石破氏は総裁選で「金融所得課税強化」や「法人税引き上げ」に言及しており、「石破ショック」による下落とみられている。

時限爆弾を抱えたような石破政権は大丈夫なのか。

産経新聞特別記者の有元隆志氏は「石破氏は執行部人事で、総裁選で対立した高市氏、茂木氏、小林氏の陣営から起用しなかった。(挙党体制ではなく)『主流』『反主流』を明確にした。麻生氏の最高顧問も名ばかりで、安倍氏を支持してきた人は、村上氏起用に反発する。党内対立は激化するだろう。閣僚の顔ぶれも『親中派』や、LGBT法を推進してきた人物が目立つ。リベラル系メディアは支持するだろうが、これまで自民党に投票してきたコアな保守層は白けており、票が離れる可能性もある。野党が一本化された選挙区では自民党が敗れる可能性もある。岩盤支持層と、野党の動向が注目される」と語った。

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