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カワノアユミの盛り場より愛を込めて 観光地化が進む飛田新地 もはや「遣手婆」たちも諦めた? 隠れ家的な雰囲気は薄れ…通りには女性や外国人も

zakzak by夕刊フジ 2024年10月3日 11時0分

人、人、人…。残暑の通りは多くの人で埋め尽くされていた。ざっと見ただけでも200人はいるだろうか。ここはタイのソイ・カウボーイでも、新宿・歌舞伎町の大久保公園でもない。大阪市の飛田新地である。

かつての飛田新地はひっそりとして、いかにも人目を忍ぶ「ちょんの間」街という雰囲気が漂っていた。男性たちもさりげなく通りを歩き、店頭に座る女の子を物色した。当時はもしこの通りを女性が歩こうものなら、店の「遣手婆(やりてばば)」から怒鳴り声が浴びせられたものだ。

それがいまでは、カップルの姿までちらほら見られる。遣手婆たちも、もはや諦めたかのようだ。

こうした通りにほど近い飛田本通商店街のカラオケスナックで、棒付きキャンディーを持ちながら飲んでいる4人組の男性がいた(飛田新地では遊ぶと、帰りにこのキャンディーがもらえる)。東京から定期的に飛田新地に遊びに来るのだという。

「以前はこのメンバーでタイなど東南アジアに夜遊びツアーに行ってたんですけど、最近は海外も値上がりしてなかなか行けなくなった。会社の社員旅行も経費で落ちなくなって、今年のタイ旅行は断念しました。もう経費で海外旅行に行ける会社は減ってきてるんじゃないですかね」

タイの性風俗の値上げについてはこれまでも書いてきたが、もはや日本の社員旅行の選択肢から外されるほど影響を与えているとは驚きだった。

飛田新地で働く女性にも変化の波は押し寄せている。大阪市内のキャバクラでも働くというホステスに話を聞いてみた。

「以前は飛田新地だけで働いている子が多かったんですが、最近ではキャバクラやクラブと掛け持ちしている子も増えてきました。キャバクラもクラブもお客さんが減っていて暇なんです。普通の風俗店だと、ホームページの写真から知り合いにバレるリスクがありますが、飛田なら知り合いが通りかかれば顔を隠したり、ドアを閉めることができる。それに、ピンクのライトが顔に強めに当たっているので、意外とバレにくいんですよ」

実際、彼女の働くキャバクラでも、彼女を含めてホステスたちの多くが飛田新地で掛け持ちをしているという。

「それと、最近は外国人のお客さんもよく見かけますね」

そう、彼女のその言葉こそが現在の変化を物語る。飛田新地は観光地化が進んだのだ。隠れ家的な雰囲気は薄れ、異国の旅人たちも訪れるようになった。それでもかつての静けさを求めて夜遊びに来る男性たちの姿も絶えず、街には、消えゆく昭和の影と新しい時代の光が交錯していた。

■カワノアユミ 20代を歌舞伎町と海外夜遊びで過ごした元底辺キャバ嬢。現在は国内外の夜の街を取材。著書に、アジア5カ国の日本人キャバクラで9カ月間潜入就職した『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)。

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