中国の株式市場が慌ただしい。9月24日に中国の中央銀行である中国人民銀行が金融緩和措置や不動産市場の支援策など、幅広い経済対策を打ち出したことを受け、株価指数が急騰した。
日本の取引所に上場していて中国の中小型株式の代表的な株価指数に連動するように運用される「OneETF南方中国A株CSI500」というETFの株価は前述の経済対策が発表される少し前の9月20日には取引時間中に年初来安値となる1220円を記録していたが、10月8日には一時7万400円を記録した。約2週間のうちに株価は約58倍も急騰したことになる。
この急騰劇を受けて筆者のもとには「中国株に投資をすれば一攫千金できるのではないか」という問い合わせが何件も寄せられたが、異常な値上がりに飛びついてもロクなことはないという過去事例を紹介した。この原稿を執筆している時点では同ETFの株価は1600円台まで急落しており、やはり今回も飛びついていたらロクなことにはならなかった。
どうしても中国株に投資をしたいのであれば、最低でも中国経済の現状を調べるべきだ。中国国家統計局が18日に発表した第3四半期の国内総生産(GDP)は前年比4・6%増となった。政府目標の5%成長を下回っており、かつ今回の伸び率は2023年以来の低い伸びとなった。同時に発表された小売売上高は前年同期比3・3%増と1~6月の同3・7%増から減速した。同時に発表された9月の新築住宅価格は15年5月以来の大幅下落となっており、依然として内需は厳しい状況が続いている。
それでは外需はどうなのか。中国税関総署が14日に発表した9月の輸出は前年同月比2・4%増だった。伸びてはいるものの、市場予想の同6%増を大きく下回っており、前月の同8・7%増からも伸びが鈍化している。米国を始め、諸外国からの対中貿易規制の影響が出ているのだろう。
中国国家外貨管理局が発表した「中国国際収支平衡表」を見てみると、中国から外資系企業が撤退している様子も確認できる。いわゆるチャイナリスクを懸念しての動きだ。公表されているデータを日頃から確認しておけば、瞬間的な急騰をみても冷静でいられるだろう。
■森永康平(もりなが こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。