Infoseek 楽天

あす自民総裁選〝有事の宰相〟にふさわしい人物は誰 石破氏vs高市氏の決選投票か 各陣営、態度未定の議員を懸命説得

zakzak by夕刊フジ 2024年9月26日 11時32分

自民党総裁選は27日の投開票に向けて「最後の戦い」に突入した。石破茂元幹事長(67)と、高市早苗経済安保相(63)、小泉進次郎元環境相(43)の「3強」が激しく競り合う展開となっている。過去最多9人が立候補したため、1回目の投票ではいずれの候補者も過半数を獲得できず、上位2人による決選投票が確実な情勢だ。党員・党友票の投票は26日締め切りで、各陣営は態度未定の国会議員に懸命の働きかけをしている。「説得工作」「引きはがし」「人事手形」「未確認情報の流布」「勝ち馬を探る動き」…。中国やロシアが軍事的威嚇を仕掛けるなか、「有事の宰相」にふさわしい人物は誰か。それぞれの思惑をはらんだ駆け引きが加速している。

「引きはがし」「人事手形」「未確認情報の流布」…

「票読みが相当難しい。投票直前まで勝負だ」「メディアの報道がバラバラ。勝ち馬が誰なのか分からない」「腹の底を探り合う魑魅魍魎の世界になってきた」「支持を求める電話がガンガンかかってくる」

投開票が迫るなか、議員や陣営関係者からはこんな本音が漏れる。

岸田文雄内閣の支持率が危機・退陣水域に落ち込み、自民党下野も危ぶまれた局面で迎えた総裁選は、最終盤を迎えて不透明感が増している。

報道各社の情勢調査では、「3強」の顔ぶれは変わらないが、その順番は「①石破氏②高市氏③小泉氏」と、「①石破氏②小泉氏③高市氏」に割れている。総得票数の分析はほぼ横並びとみられ、各候補は必死だ。

まず、5度目の総裁選出馬を「最後の挑戦」と位置付ける石破氏は、地方に根強い人気があり、党員・党友票が頼りだ。ただ、「安倍晋三政権や麻生太郎政権では、身内のはずの内閣や党をメディアを通じて背後から撃つ(批判する)動きで不興を買った」(ベテラン議員)こともあり、議員票では伸び悩んでいる。現在、陣営のベテラン議員が中心となって、決選投票も見据えた、働きかけを強めているという。

ある中堅議員は「距離がある麻生氏とも接近を図っている。石破氏本人は総裁選の討論でも目立たない『安全策』をとっていた。水面下でできることは何でもやる、ということだ」と語った。

保守派屈指の政策通で、「日本初の女性宰相」の期待もある高市氏は苦戦の下馬評を覆し、党員・党友票で急伸を見せているという。全国各地で開催して大好評だった講演会や、総裁選の論戦で強い存在感を見せた影響が大きそうだ。

前回総裁選で高市氏を全面支援した安倍元首相亡き後の再挑戦だが、他陣営の激しい引きはがしもあり、出馬に必要な20人の推薦人確保も難航した。政界やメディアの一部には「高市潰し」といえる動きもあった。それだけに、周辺は「大接戦でまったく油断できない」と厳しい見方だ。

高市氏は「ブレずに最後まで政策論で正々堂々勝負する」と周囲に語り、多くの議員に直接電話をかけ、支持を呼びかけているという。陣営関係者は「日本を取り巻く安全保障環境が悪化するなか、『有事』に対峙(たいじ)できる候補は高市氏だけ。(小林鷹之前経済安保相の出馬などで)割れた保守系議員をどれだけ結集できるかがカギ」と語る。

当初、「圧倒的知名度」と「若さ」「見栄えの良さ」などから「選挙の顔」を期待され、議員票、党員・党友票ともに有利とみられていた小泉氏は、「選択的夫婦別姓の導入」や「解雇規制の見直し」などの生煮えの政策論が批判を浴び、失速気味だ。ただ、議員票では一歩リードしているとみられ、陣営は巻き返しへ働きかけを加速しているという。

小泉氏の後ろ盾である菅義偉前首相は「無派閥」の象徴的存在で、岸田政権とは一線を画してきた。岸田政権の主流派で、麻生派の領袖(りょうしゅう)である麻生太郎副総裁との「キングメーカー争い」は激化していた。

ところが、小泉氏は24日、その麻生氏と面会して「力を貸してください」と支持を要請した。麻生氏は、菅氏に近い武田良太元総務相とも対立関係にある。

『選挙に勝てる顔』大きな関心事

永田町の常識では考えにくい動きと訝しむ向きもあるが、関係者は「今は必死でなりふり構ってはいられない。麻生氏との面会を含め、小泉氏周辺が主導してあらゆる可能性を探っている」と語る。

最終決戦の展望をどう見るか。

ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「非常に読みにくい。議員票は小泉氏が60票前後、高市、石破両氏が40票前後との見立てがある。党員票では石破氏がリードし、高市氏が急速に伸ばしてきた展開で、横並びの激戦になっている」と分析する。

勝負の分かれ目はどこになるのか。鈴木氏は「候補の優劣や、情勢を見極めるためか、態度不明の議員が多い。衆院議員は総選挙が近いと見ており、『選挙に勝てる顔』が大きな関心事だ。参院議員は来年夏の参院選を意識し、それまで大過なく乗り切る安定感を求めている。立憲民主党の新代表に論戦にめっぽう強い野田佳彦氏が選ばれたことで、新総裁には国会対応力(論戦力)を意識する声が広まっている。各陣営の働きかけも交錯し、各議員が迷いを深めている。麻生氏が率い、唯一存続する派閥・麻生派をはじめ、決選投票での各陣営の動向も流動的だ。投開票直前まで駆け引きが続くはずだ」と語った。

【自民党総裁選・立候補者】

候補者 衆院選挙区・当選回数

高市早苗経済安保相(63) 奈良2区⑨

小林鷹之前経済安保相(49) 千葉2区④

林芳正官房長官(63) 山口3区①参⑤

小泉進次郎元環境相(43) 神奈川11区⑤

上川陽子外相(71) 静岡1区⑦

加藤勝信元官房長官(68) 岡山5区⑦

河野太郎デジタル相(61) 神奈川15区⑨

石破茂元幹事長(67) 鳥取1区⑫

茂木敏充幹事長(68) 栃木5区⑩

この記事の関連ニュース