近藤倫子氏寄稿
岩盤保守層が警戒する「選択的夫婦別姓制度」の導入に向けた動きが加速している。石破茂首相は昨年12月24日の記者会見で、「(党内議論の)頻度を上げ、熟度を高める」と語った。年末年始の帰省は一段落したが、当事者の夫婦や子供だけでなく、「高齢の親世代」はどう思っているのか。元児童家庭支援士で著述家の近藤倫子氏が取材したところ、「孫の成長」や「先祖代々の土地やお墓」「お葬式や法事」「介護」などを心配していた。
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筆者は前回まで、主に「子供の視点」で、選択的夫婦別姓は「強制的親子別姓」であり、「兄弟別姓」の問題も指摘してきた。
今回は「高齢の親世代の視点」に注目した。
筆者のSNSに寄せられる65歳以上の方々で一番多かった意見は「孫の姓について不安や心配がある」だった。これは、「親子別姓」「兄弟別姓」となってしまう孫に対して、祖父母としての当然の心配といえよう。
直接話を聞いた80代女性は「家族共通の姓(ファミリーネーム)がなくなり、夫婦や親子、兄弟がバラバラの姓になって、孫たちが幸せに安心して成長できるのか、とても気になる」と語っていた。
次に、「先祖代々受け継いできた土地やお墓が心配」という意見も多かった。先祖と子孫の継承を断ち切る危険性に注目するものだ。
土地で言えば、現行法で夫婦同姓であるからこそ相続の際に戸籍を見れば誰が夫(妻)で誰が子供かが一目瞭然となっている。夫婦別姓制度が導入されれば、戸籍上で配偶者と子供を確認することが困難となり、相続争いが増加する可能性はないのか。
お墓の問題も深刻である。古来より「◯◯家の墓」と子孫に継承されてきたお墓は、別姓制度導入された後、一体どのようになるのか。
「お葬式の際、別姓夫婦や別姓親子は誰が喪主を務めるのか。法事はどうするのか」という不安を挙げている人もいた。
80代男性は「介護の不安」を次のように語っていた。
「夫婦同姓の今の時代でも、自分の親は介護しても、配偶者の親はなるべく介護したくないという風潮がある。夫婦別姓が制度化されれば、介護不満や介護放棄に拍車がかかるのではないか」
選択的夫婦別姓の推進派は、当事者夫婦の視点で「アイデンティティーの喪失」や「日常の不便・不利益」を指摘している。だが、高齢の親世代や子供たちを含めた、国民全世代で考える必要があるのではないか。
民族や家族の歴史を継承していくためにも、先祖と子孫という日本の縦糸と、家族という横糸を断ち切ることはあってはならない。
■近藤倫子(こんどう・りんこ) 元児童家庭支援士、著述家。1975年生まれ。日本女子大学卒。Gakken、展転社にて連載、月刊WiLL執筆メンバー。ユーチューブ番組「デイリーWiLL」水曜担当。