フィンランドのコメディー映画史上、最大規模の巨費を投じた映画「ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!」の続編「ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一髪!」が、今月20日に公開される。
前作でやらかしてしまったため、刑務所に収監されているメタルバンド「インペイルド・レクタム」のメンバー4人。目指す音楽性は、〝終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル〟という、何だか分からないそれ。とにかく派手にかき鳴らす感じだが、歌唱シーンに字幕がないため、メッセージ性がつかめない。残念~。
刑務所といっても、日本の没個性的なものとは大違い。囚人服は着ているが、髪形は自由。食事は豪華なビュッフェスタイル。独居房でギターを弾くこともできる。所長は「人々が入りたくなる刑務所を目指す」という方針を持ち、プリズンアドバイザーの監査を心待ちにしていた。
ある日、4人のところに、音楽業界の大物プロデューサーが音楽フェスへの出演依頼で訪れる。収監者が出られるはずもないだろうに、と思うが、そこはコメディー映画。まんまと脱獄を成功させ、ライブの地ヴァッケンを目指すことになる。
追っ手が迫る。逃げるために悪戦苦闘するさまは、ドタバタコメディーの様相で、一難去ってまた一難という課題が続くが、幸運と機転で次々に突破していく。ヘヴィ・トリップは珍道中と訳したい。
最初に出演依頼を受けたライブの出演枠は埋まっていたが、別のライブのオープニングアクトとして抜擢される。音楽プロデューサーが4人を振り付ける。だが、彼らは言いなりにはならず、自分自身を通すことに。その結果…。
映画の中で重要な場面に出演したのが、日本の女性3人組のメタルダンス・ユニット、BABYMETALだ。カメオ出演ではなく、3人それぞれに英語のせりふがあり、ライブシーンも結構長い。北欧のメタルシーンにも彼女たちが知られているということか。
1作目を見ていなくても楽しめるが、本作公開前に再上映されている1作目のバカバカしさを体感しておけば、北欧メタルの世界に心身ともにどっぷりと浸れる。 (演芸評論家・エンタメライター)
■渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう) 新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクを経て演芸評論家・エンタメライターに。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。