自公与党が10月の衆院選で過半数割れしたので、国民民主党との部分連合が必要になった。とりあえずは仕方ないが、できれば、来年7月に衆参同時選挙をしてでも解消すべきだ。
公明党は地方選挙では堅調だったのに、衆院選では石破茂総裁(首相)の自民党と組んだために惨敗した。長期的にも少し下降線だが、これは創価学会会員数の微減だけでなく、日本維新の会や国民民主党など中道政党の数が増えたことも理由だ。
ただ、自民党にとっては、公明党は約束したら確実に協力してくれる頼りになる連立相手だ。
自公与党の不振は、自民党内の足の引っ張り合いの結果で、団結して選挙に臨めば、過半数回復は難しくない。
3党連立は、小選挙区事情から合理的でない。
先の衆院選で、自民党は公明党に11選挙区だけ譲ったが、それでさえ自民党内の不満は強い。国民民主党は42人が小選挙区に出馬して11人が勝利し、比例代表でも17人が当選した。もし、国民民主党が連立に加わっても、現職議員すら一部しか小選挙区を譲ってもらえないだろう。結局は解党して議員は自民党に移るしかなくなる。
自民党が野党から多くの有力議員を移籍させたことは、生え抜きの若手議員の育成にはマイナスだった。一方で、人材を奪われた野党が政権を担える党に成長することを妨害した。総裁選を争った石破茂首相も高市早苗前経済安保相も元新進党議員だ。
部分連合では、国民民主党が自民党から支持者を奪っており、野党第1党である立憲民主党の延命を助けている。しかも、衆院選での国民民主党の公約を見ると、所得税と消費税の減税や、ガソリン代や電気代値下げの一方、バラマキ政策も並んでいる。歳出削減は所得や金融資産などの能力に応じた医療費負担増ぐらいだ。
現役世代を助ける方向性はいいが、財源軽視では「悪夢のような民主党政権」の再現にならないか。また、「年収103万円の壁」撤廃は消費税3%分の所得減税になる一方、壁の解消策には必ずしもならない。逆に、もっと安上がりな解決法もあり、効率の悪さが顕著だ。
公明党の提案は、給付金など1回限りのものが多いし、政策の恩恵が広がりすぎない工夫もしている。維新は支出削減や規制緩和も同時に提案している。
国民民主党は、経済政策以外ではまっとうだ。
玉木雄一郎代表(役職停止)は、ダボス会議に出席して世界に向けて首相たり得ることをアピールするという。自民党の自称「総裁候補」は見習ってほしい。それだけに、経済政策についての安直な取り組みは遺憾だ。
これでは、自公与党は維新などとの連携に傾斜せざるを得なくなる。
■八幡和郎 (やわた・かずお) 1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。作家、評論家として新聞やテレビで活躍。国士舘大学大学院客員教授。著書・共著・監修に『安倍さんはなぜリベラルに憎まれたのか―地球儀を俯瞰した世界最高の政治家』(ワニブックス)、『日本の政治「解体新書」世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書439)、『民族と国家の5000年史』(扶桑社)、『系図でたどる日本の皇族』(宝島社)など多数。